2021/12/13 8:57

旗揚げ会見で飛んだ厳しい声!和田京平絶賛の名勝負!絶好調!スターダムの10年を振り返る

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旗揚げ会見で飛んだ厳しい声!和田京平絶賛の名勝負!絶好調!スターダムの10年を振り返る
5.0

来年より、テレビ放送も拡充!


 ある、2人組の女性アイドルシンガーが好きな友人がいた。インディ系のそれながら、バックバンドを従えた動きの激しいライブが人気で、なかなかの動員を誇っていたユニットだったと思うのだが、3年前、片方が引退。理由が、まあ、家庭に入るということで、友人のA君もファンを辞めてしまった。ところがである。今年、意外な場所で、そのA君を見た。なんとスターダムの会場で、選手とチェキを撮っていたのである!さっぱりプロレスの話をしたことのない、しかもかなり年下の友人だけに、筆者はビックリ。「な、なんでいるの?」と聞くと、彼は言った。「いやあ。YouTubeで観たら、はまっちゃって……」毎回チェキも撮っているとのことだった。

 スターダムの勢いが止まらない。7日の戦略発表会では、来年より、看板TV番組『We are STARDOM』がBS11でも放送されることが告知。並びに、東京MXテレビでの同番組放送時間帯も毎週月曜19時半よりに昇格し、各地方局でも同様に、毎週の放送が増大。2019年と今年を比べると、売上高が2.5倍の約5億円に上がっていることも明かされた。よりプロレスになぞらえて言えば、今年は3月に日本武道館大会、10月に大阪城ホール大会を開催。さらに、12月29日には両国国技館大会が控えているが、女子プロレス団体でこの3会場を同年内に制すのは、1995年の全日本女子プロレス以来とか(26年ぶり!)。来年は地方興行含め、大会開催地域を拡大するという。ここに来てその存在は、プロレス界全体を明るく牽引するものになっていると言っても言い過ぎではないだろう。なお、今年9月28日の、ブシロードの株主総会では、その本体の赤字が発表。すると、スターダムのスターライト・キッドらが現れ、木谷オーナーにビンタし、「スターダムはこんなに盛り上げてやってるのに、ブシロード本体が赤字ってどういうことや!次は絶対黒字にしろよ!」と叱責し、株主たちが拍手する場面があった。これまた、本丸も明るく照らしている業績の証左と言えよう。

 今回の当欄は、このスターダムの躍進の内実に注視すると同時に、旗揚げ時を含めた歴史を振り返りたい(文中敬称略)。

コロナ禍に躍進した、意外な数字。


 まず近年のスターダムの好調ぶりだが、そのきっかけが2019年12月、ブシロード体制下に入ったことだったことは間違いない。当時の当欄でも触れたが、ブシロードの木谷高明会長がこちらに目をつけた理由は、「海外のプロレス団体は、WWEを始め、男子と女子が同じリングが闘っている」から。新日本プロレスとがっつり同舟するわけではないが、女子に着目して間違いはないと思ったのだ。

 するとどうだ。ブシロード傘下となって2ヵ月後の後楽園ホール大会では、同会場では団体史上最高の超満員札止め1,602人を動員。「これが普通にならないと」と、ロッシー小川エグゼクティブプロデューサーも鼻息が荒く、運営する『株式会社ブシロードファイト』の原田克彦社長も、4月29日に予定する大田区総合体育館大会に向け、「4,000人は動員したい」と意気盛んだった。

 ところがである。改まる要もないが、コロナ禍で、先の大田区大会含め、軒並み興行は中止に。新たな神奈川でのプロレス興行のランドマークとなる横浜武道館大会は、なんと、こけら落としにこのスターダムの興行が予定(8月22日&23日)。対戦カード発表会見で、エースの岩谷麻優が、「私、こけら落としの意味を知らなかったんですけど」と初々しく語っていたのも束の間、結局、こちらもコロナのぶり返しで、延期に。結果、昨年の大会数は53回にとどまり、年間観客動員は21,316人に。前年の84大会及び、32,813人動員と比べ、当然のように劣る数字となった。

 しかしながら、昨年12月12日の会見で、意外な事実が明かされる。なんと、昨年の8月から10月の四半期では、過去最高の売上を記録。さらに、有料ファンクラブ会員数は7.5倍、有料動画配信サービス会員数は2倍、オンライン通販売上は8倍になっていたのだ。目覚ましい数字であり、当然、単月での売上も黒字に。背景には、コロナ禍という危機を、逆に好機と捉えた戦略があった。木谷会長も、同会見で、はっきりと言った。

「2月にコロナになった部分は大きい」

無料ファンクラブ会員も大事!


 具体的には、試合が出来ない分、とにかく、団体からの発信を充実。特にSNS、YouTube関連には渾身の注力。公式チャンネルでは、告知や速報、過去の試合といった定番系だけでなく、企画ものはもちろん、選手がピンで最もカッコ良く映える瞬間と言って過言でない入場シーンを、スマホながら撮影しアップしたものがあったりと、多士済々。全国的に巣篭りが続く時期に、一見さんを入り易くしたのだ。さらに、有料のみならず、無料のファンクラブ会員も募集。こちらは登録すればチケットが優先的に入手出来るようになっている。もちろん、一般と比べてという意味ながら、「無料なら、ちょっと入ってみようかな」という層は多いはずだ。これによりスターダム側は、自分たちの情報をメルアドに送れるという利点があるのだ。けだし、木谷会長は前出の昨年末会見で語る。「その余勢を駆って、大会再開後もお客さんに来ていただけて、こういう結果になった。ベースが上がっている。コロナが明けるともっと大爆発すると思う。手応えは十分にある」。武道館、大阪城、両国3会場同年制覇や、来年からの地方興行の増大は、先述の通りである。

 当欄でもたびたび話題にしてきたが、木谷会長の名言、「全てのジャンルはマニアが潰す」を教唆に、ライトユーザーの取り込みに成功。それは、実はスターダムを旗揚げから知る要人の考えと、実は通底していた。ロッシー小川である。

旗揚げ会見で飛んだ、厳しい所見。


 スターダムの設立会見というか、発進会見に行った時のことを思い出す(2010年9月7日)。言い直したのは他でもない、この時点で、会社はまだ設立されていなかったのだ。

 創設の端緒ははっきりしている。グラビアアイドル、愛川ゆず季が2010年10月にプロレスデビューを控えていた。愛川はテコンドーを習得しており、そもそもプロレスに興味があった。すると、同じ芸能事務所(「プラチナムプロダクション」)の元女子プロレスラー、風香が助力。小川に「愛川を興行面でプロデュースしてほしい」とした。そして風香が愛川にプロレスの稽古をつけていると、その場にプロレス志望の練習生が集まってきた。(これは団体に出来るかも)と手応えを感じた風香が、改めてその構想を小川に明かし、スターダムに至ったのだった。

 ところが、もともと大のプロレスファンが高じて、全日本女子プロレス入りし、そのフロントとなった小川は、1997年、業績不振だったそちらを離れ、自ら新団体、アルシオンを手掛けるも、2003年には活動停止。2006年1月には貯金が0に。住所もなくなり、キャンピングカー生活をしていたこともあったほど。なので、時は戻るが、この発進会見の際、こんな厳しい声が記者から飛んだ。

「小川代表は、今まで何回か団体を潰しているわけですが……」

 正式には語弊のある言い方ながら、小川に苦渋の表情が浮かんだ。「経験に勝るものはない」とし、続けてこう返したのを鮮明に覚えている。

「今までの団体と比べて、一番リラックスしてます。それは、一から育てることが出来るから…」

 事実、会見には、団体GMとして風香、プレーイング・マネージャーとして高橋奈苗、そして夏樹☆たいようの姿があったが、他の陣容はデビュー前の愛川ゆず季プラス、7人の新人練習生のみだった(キッズレスラー除く)。

 小川が、常に心掛けている、全日本女子プロレス社長・松永高司の言葉があるという。

「お前はプロレスマニアかもしれないが、プロレスの興行というのは、初めて見にきた一見の客を楽しませるのが大事なんだ」

愛川ゆず季のマネージャーも尽力!?


 迎えた2011年1月、新木場1stリングでスターダムは旗揚げ。(おっ!)と思わせたことがあった。既にプロレス経験のある高橋奈苗、夏樹☆たいよう、愛川ゆず季は第1試合に出場。他、4試合は、新人が務めたのだ。第2試合は格闘家の長野美香が初陣の須佐えりを相手にし、第3試合は夢vsパッション・ナッキーのキッズ・ファイト(3分1本勝負)。そして、まさにセミとメインは、全員これがデビュー戦だった(星輝ありさvs岩谷麻優、美闘陽子vs世IV虎)。いずれも堂々たる試合。これは、コーチ役も務めた高橋奈苗の貢献が大きかったろう。なにせ、この旗揚げ戦の翌年3月の奈苗vs里村明衣子戦は、レフェリーの和田京平が、「男子のプロレスでも見られない、素晴らしい内容だった」と絶賛したほど。そして、当時のエース、愛川のプロレスに対する適応力も素晴らしく、スターダム旗揚げに先んじたデビュー戦でその奈苗相手に惜敗も、「お前……本当にプロレス、初めてかよ」と驚かせたのは語り草。実はこちら、愛川のマネージャーのW氏の存在が大きかった。大のプロレス好きであり、「プロレスとは、真剣なものでなければならない」という自分なりの美学があり、手を抜いた試合や、ふざけた展開があると、すぐ怒られたという。しかも、「お前、STF、やった方がいいんじゃないか?」「シャイニング・ウィザードもやれよ」と進言も……。そんなイズムあいまり、キャンパスにも反映。愛川の2013年の引退後も、紫雷イオや宝城カイリらのスターたちが、素晴らしい試合を展開してきた。2014年、2015年に一般誌で女子プロレスが特集された際の文言を引用させて頂きたい。「女子プロレスにありがちな『昔の名前で出ています』といったベテラン選手は、スターダムに皆無。新人代謝が激しく、フレッシュな選手が並んでいる」「かつて全女(※全日本女子プロレス)では25歳定年制が暗黙の了解として存在した。これがなし崩しになってから女子プロレス界は、世代交代が進まずにロートル選手ばかりとなる。再び変化が訪れたのは、ここ10年ほどのこと。現在、第一線で活躍するのは若い選手がほとんど」(いずれも『ENTAME』2014年12月号、及び、2015年6月号)。その世代交代を強く印象付けたのも、スターダムの功績。木谷会長が、その可能性かつ伸びしろに注目したのも、想像に難くない。

 木谷会長によれば、世界で女子だけのプロレス団体というのは、実は日本を除けば皆無だという。そして言う。「アジアはアイドル文化があるので、新日本よりスターダムの方がやりやすい可能性すらあります」(『Number Web』2021年9月30日更新分より)。

 そのポテンシャルは、もはや広がるばかり。今後のスターダムに、より注目して行きたい。

※12月14日より、新たな拙著『コメントで見る! プロレスベストバウト』(マイウェイ出版)が発売されます。猪木vsアリから、高橋ヒロムvsエル・デスペラードまでのベストバウト40試合を掲載。ご興味のある方は、宜しくお願い申し上げます。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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