2021/10/4 10:07

大日本の名物タッグも薫陶!馳浩が新部屋提唱!? 引退も、部屋継承で暗雲?『横綱・白鵬とプロレス』!

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引退し、間垣部屋を襲名も……。


 今までの中には、こんな仕事もあった。「力道山の国籍を調べてほしい」。あくまで力道山企画の一環で、例えば、出生地まで行き、証明書を取ってくるという極度に大変なものではない。国籍が明示されている資料を探し、それを活かすという形だった。ご存じの通り、力道山は元力士。そこで、50年ほど前に有名出版社から刊行された大相撲のぶ厚い歴史書を紐解くと、最後部に今までの力士一覧が掲載されており、国籍も明示されていた。ところが、『力道山(韓国)』となっており、これはこれで一思案(※力道山は北朝鮮出身とされる)。より精査が必要となったのだが、それよか筆者が驚いたのは、その本の出だしであった。繰り返すが、大相撲の歴史を詳細に扱った本で、時系列にそれを写真や図説で紹介しているのだが、なんと、神話を含めた日本最古の歴史書、『古事記』の説明から入っていたのだ。具体的には、『古事記』に載っている2つの神、建御雷神(タケミカヅチ)と建御名方神(タケミナカタ)の戦いが、相撲の起源であるということであった。全ての相撲の歴史書が、これに触れているかどうかはわからないが、折に触れて言われる、『相撲は神事』なる言説に、改めて感じ入った次第であった。

『横綱・白鳳引退』。今週月曜日(9月27日)に入ったニュースに驚いたファンも多いだろう。白鵬と言えば、優勝回数(45回)、通算勝ち星(1,187勝)、全勝優勝回数(16回)など、数々の最多記録を打ち立てた大横綱。その後の各種報道によれば、本日10月1日に引退会見、並びに、年寄『間垣』を襲名するということだが、後者については議論ふんぷんだった様子。年寄として、一層の品行方正を旨とする誓約書に、一筆書かされたという記事もある。これまでの素行が、取り沙汰されているのだ。その指摘の中には、(少なくとも筆者的には)心ならずの、“プロレス”というワードも頻出する。

 今回の当欄は、その過去の再録や是非の考察も含め、『横綱・白鵬とプロレス』というテーマでお送りしたい。

父は白鵬以上のスーパーヒーロー。


 ご存じのようにモンゴル出身の白鵬だが、プロレスとの関係は浅くはない。その父、ジジド・ムンフバトさんはレスリング選手として、1964年の東京大会から4大会連続でオリンピックに出場。1968年のメキシコ大会では87キロ級で銀メダルを獲得。これはモンゴルにもたらされた初めての五輪メダルであった。なので、現地では白鵬以上に英雄視されていたと言って過言ではない。もちろんこれはアマレスなわけだが、プロレスと言えば奥さんの紗代子さんは、かつて、前田日明をスーパーバイザーにした団体『ビッグマウス・ラウド』のマスコットガールを務めたことが。このマスコットガールは同団体の初期に何人かおり、容貌もチャーミングだったのだが、実は、そのほとんどが関係者の娘。この紗代子さんも、同団体の顧問、W氏の娘であり、白鵬との結婚が発表された際は、プロレス側マスコミも、かなり沸いたものである。なお、W氏は同じく横綱・朝青龍の後援会の会長を務めていた時期もあり、相撲関連のマスコミは、どちらかというとこちらに色めきたったようだが。

 さて、その素行が、プロレスに絡められ批判された最初は、2009年の夏場所だったと記憶する。初日の2日前に白鵬と朝青龍の、既に当時・両横綱、並びに大関・日馬富士が、懇親のゴルフ大会を開催。これに苦言が呈されたのだ。つまり、両横綱と大関は、部屋も違うし、優勝を争うわけだから、同舟は望ましくないというわけだ。横綱審議委員会のメンバー、内館牧子さんの、こんな発言が残っている。「とんでもない話。緊張感の欠如。プロレスでも正規軍とヒール軍は別々のバスで移動する」。これは同氏がプロレス好きであるからこその表現だが、以降はプロレスが、角界という規格からの外れを意味する代名詞に。その一つが、表現されるに、いわゆる“プロレスまがいの攻撃”である。

“かち上げ”だけで批判される角界。


 こちらの類いで有名なのが、白鵬と同郷で先行する横綱だった朝青龍が稽古中に豊ノ島にプロレスまがいの技を仕掛け、負傷させた出来事(2007年4月30日)。詳細はこうだ。「(飛び込んでくる豊ノ島を)右腕で(フロント)ヘッドロック。そのまま寄り、首を左にねじり返して体をそらせた。相手が自分に背を向けて右足から崩れ落ちるところを、さらに上からプッシュ」(『日刊スポーツ』同年5月1日付。括弧内付記は筆者)。何度読んでもイメージしにくいのだが、裏DDTのような形だろうか?負傷かつ病院行きに至ったので大騒ぎとなったのだが、これが、“プロレスまがい”と報道されなければ、ここまで話題になったかどうかとは思う。稽古中のことであるし、お互い、力が入っていれば、体の入換えで、本文中のようなことになることも、ないわけではないと思うのだが。なお、朝青龍はこの事後、豊ノ島にすぐ「大丈夫か?」と声をかけている。

 同じく、白鵬が“プロレスまがい”で一種、揶揄された事例は、大きく言えば2回。2016年の夏場所の5日目に宝富士との取り組みで、右からかち上げ。「プロレス技のエルボーのようだ」と横綱審議委員会の面々から批判を浴びた。2019年の九州場所の12日目にも同様に事例が。遠藤との取り組みで立ち合いと同時に右からかち上げ、肘が遠藤の鼻先をかすめ、遠藤は鼻血を出した。こちらも報道によってはエルボーとされ、かなりの批判を浴びたのが、記憶に新しい。一方で、相撲を科学的に考察する好角家からは、こんな意見も。「立ち合いに何をしてくるか分からないと思わせる、勝つために考え抜かれた作戦のように見えた」(明治大学・桑森真介教授。『朝日新聞』2019年12月3日付)。とはいえ、横綱審議委員会としては、横綱の攻めとしては荒っぽく、品がないということなのだろう。

 そして、直接的にプロレスとの関連が批判されたことも。2009年8月30日の全日本プロレス・両国国技館大会でのことだ。白鵬がリングサイドに客として陣取ると、第3試合でブードゥー・マーダーズのTARUが「オレは相撲が大嫌いや!脂肪の塊やで!白鵬さん、相撲の強さ見せてみい!」とマイク。続く場外乱闘で曙、浜亮太がそのTARUを羽交い締めにして白鵬の前に差し出す。すると、白鵬も立ち上がり、右手でチョップ2発を見舞ったのだ。白鵬は大会後、ご機嫌で語った。「試合前に横綱(曙)から、悪い奴を懲らしめるから、頼むと言われた。プロレスは初観戦だけど、良いね」。やはりこれについて、翌日、大相撲協会の友綱理事がこうコメントを残した。「品格のないことはやらない方がいい」……。因みに、2012年12月26日には白鵬、なんと大日本プロレスの関本&岡林と練習。そして、翌年1月16日には両国国技館に自身の取り組みを観に来ていた2人と握手。なんのことはない、前者は曙の計らいで実現した、関本&岡林の出稽古で、後者はもちろん、初場所での出来事。プロレス側が自分たちのフィールドに入ってくるなら、別段問題はないということか。

 いずれにせよ、この事件(?)を観て、思い起こす出来事があった。

『相撲が国技』は、長年のイメージ。


 2006年8月27日、同じく、全日本プロレス・両国国技館大会。この日の目玉は、国会議員としてお馴染みの馳浩のプロレス引退試合。よって、同郷の大先輩議員、森喜朗氏もリングサイドに。すると、これまた同じく、ブードゥー・マーダーズの、こちらはYASSHIが、マイクで一席ぶったのだ。「永田町からお客さん来ているみたいやね。おい、そこの森!悪そうな顔してんね。おなかの中、何か詰まっとるねえ。お金か!は?黒い垢か!お前がそんなんやったからな!この俺がこんな悪ガキになったんじゃ!」これにマイクで応じたのが、何と馳。「そういうお前が生きてこれたのも、文部省の教育のお陰じゃないのか!」そして試合に突入すると、乱戦模様の中、TARUが森氏の元へ雪崩れ込み、森氏はそれを手ではらったり、椅子を持ち応戦しようとする姿も。

 白鵬は2015年、最多優勝を記念しパーティーを開催。そこに当時、文部科学大臣だった馳を招待。そのお礼に、12月17日、自身で改めて文部省を表敬訪問。そこで言った。

「(他の部屋の継承でなく、)一代年寄になりたいんです」馳は返した。「それはいいね。モンゴル出身者を集めて、白鵬部屋を作ればいいじゃないか」。良い悪いはともかく、いかにも“feeling good”をその座右の銘の一つにする馳らしい爽やかさと自由を感じた。

 冒頭のように今回、間垣部屋を継承するとされ、しかし、品格面での一筆を書かされているという白鵬。かち上げのことを品格なしと言うが、横綱となれば、他の番付以上に勝つのに必死である。白鵬のアプローチは勝つためのものであり、それを、今回の部屋継承での品格問題で取り沙汰すのは、かなり事情が違う気はするのだが、どうだろうか(もちろん、他にも揉めた要素はあったかもなので即断は出来ないが)。

「相撲は神事だから」「相撲は国技だから」と巷間言われるが、神事はともかく、相撲を国技と定める法律はない。これは、好角家ならご存じだろうが、明治期に相撲場を建てた際、挨拶文に「角力(すもう)は日本の国技であり」の一文があり、定着して行ったのが真相だ。

 その“国技イメージ”を守るのも悪いことではないが、それを盾に、そぐわぬものを一様に批判したり遮断しているのであれば、未来は明るくないのではないか。

 既にさまざまな疑義や批判が出ている、今回の相撲協会の白鵬への対応。日本相撲協会にも、その声が聞こえていれば良いのだが。

 白鵬関、永年の土俵上での闘い、お疲れ様でした。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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