2021/1/31 19:58

全日本プロレス社長時代の武藤と対戦!? モデルはクドカンの家庭!? 話題沸騰!プロレスラー主人公ドラマ『俺の家の話』を、プロレス側から分析!

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TBS系列で、毎週金曜夜10時放送!


 2006年11月、『ウーマンリブ先生』という芝居が池袋で上演された。役柄として、本を全く読んでいない無知な編集者が出て来るのだが、劇中、彼がこんな風に聞かれ、返すシーンがあった。

「川端康成は知ってる?」

「……プロレスの?」

 文字にしても伝わらないとは思うが、間の取り方といい、言い回しといい、なんとも可笑しく、場内は大ウケだった。この脚本を書き、プラス、その編集者の役柄を演じたのが、“クドカン”こと、宮藤官九郎さん。既にテレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』、通称、『I.W.G.P.』を手掛けていたこともあり、そのプロレス好きぶりに、いたく感じ入ったものである。

 そのクドカンさん作の連続ドラマ『俺の家の話』が、早くも話題となっている(1月22日(金)開始。TBS系列で毎週夜10時放送)。初回の視聴率も11.5%と好数字なのはもちろん、棚橋弘至ら有名レスラーも、視聴や感想を続々ツイート。それもそのはず。このドラマ、元プロレスラーが主人公という設定。もちろん架空のプロレス団体も出て来るし、なんとあの長州力までも出演しているのだ。

 今回の当欄は、当欄らしく、この『俺の家の話』に、プロレス側から切り込んでみたい。

関本大介も、クドカンワールドに参戦!


 あらすじは、1月22日の初回放送終了まででざっくり言えば、能楽一家に生まれ、しかしプロレスラーになった長男が、人間国宝の父の危篤を機に引退。その跡を自分が継ぐというストーリー。この主人公のプロレスラー役が、TOKIOの長瀬智也さん。実はこのドラマ、昨秋の時点からマスコミ紙誌上では大きく話題となっていた。理由は長瀬さんが、今年の3月に所属のジャニーズ事務所を退社することが既に決定しており、その後は(ここが大事なのだが)、裏方の仕事に徹する青写真だということ。つまり、単純に言えば、長瀬さんの最後の連続ドラマ主演作と見られているのだ。

 その意欲を示すかのように、長瀬さんはトレーニング等で、13kg増量。プロレスラーという役柄に恥じない、見事な肉体を披露している。その熱意は、同作でタッグを組む脚本家がクドカンさんだということにも起因しているだろう。2人は前出の『池袋ウエストゲートパーク』で初タッグ。以降、『タイガー&ドラゴン 』『真夜中の弥次さん喜多さん』など、テレビ、映画を問わず、何度もコンビを結成。映画での最新タッグとなる『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)には、関本大介も出演している(地獄の警備員役)。

 そして、冒頭にも触れた、クドカンさんのプロレスファンとしての嗜好が、遂に前面に出された感があるのが、今回の『俺の家の話』なのだ。同作プロデューサーの磯山晶さんの発言から引用したい。

『プロレスが先で能楽が後ですね。昔、ジャック・ブラック主演の『ナチョ・リブレ 覆面の神様』という映画の話で宮藤さんと長瀬くんが二人で盛り上がっていて。その時に「プロレスか」と思ったのがきっかけですね』(HP『Real Sound』1月22日更新分より)。

主人公と同年齢で引退した、唯一の日本人レスラーとは?


 先ず、同ドラマは、2021年が舞台のようだ(※ある書類を見るシーンで、『令和3年1月19日』とある)。それを元に、プロレス要素から詳しく観ていこう。長瀬さん演じる主人公の(元)プロレスラー、観山寿一は42歳の設定(※実は長瀬さんの実年齢と一緒)。初回放送でのデビュー戦での会場の電光掲示板に『DEBUT MATCH 2000』とあることからすると、デビューはおおよそ、21歳の時か。“超獣”の名で一世を風靡したブルーザー・ブロディに憧れていたという味付けも。ブロディが客死したのが1988年で、ということは、この時、主人公は、8~9歳。ブロディは突然の永眠であり、死の間際に動きが衰えていたということは特になく(実際、逝去の4か月前にはジャンボ鶴田を下してインターナショナルヘビー級選手権を奪取している)、幼心にブロディのファイトが刻まれているというリアリティも十分。加えて言えば、ドラマ内で、主人公(子供時代)が猪木vsブロディをテレビで観るシーンがあるのだが、これは1985年4月18日の両雄の初対決時の映像。両者リングアウトでのフィニッシュとなる場外でのパイルドライバーをしっかり映しているのが何とも心憎いのだが、この時の主人公は、先ほどの3年前の日付だから、5~6歳。まさにドラマ内でも、同年相応の子役が演じているのが(こちらの考え過ぎと思わなくもないが)流石だ。

 そして主人公は、プロレスと人生のキャリアを積む。ドラマ内では、長州との対決時に結婚、武藤との対戦時にマンションを買い、子供が生まれたのが蝶野と戦った年であるとの述懐がある。おそらくシングルでという意味だろうが、それはさておき、その子供は、今、小学5年生(約10~11歳)とか。すると、およそ10年前である2011年の蝶野なので、大体、IGFのエグゼクティブプロデューサーを務め、橋本大地のデビュー戦の相手を務めたあたりの時期ということも、別に制作陣もそこまでこだわってないだろうが、無駄に抑えておきたい。主人公は2000年のデビューだから、その数年後の対戦の長州は、おそらく良い感じでフリーだった2004年以降の対戦か。武藤はその後で、2011年よりは前だから、これは、全日本プロレスの社長時代ということになる。武藤が他団体にも積極的に打って出て行った時期なので、他団体のリングなら、スペシャルマッチ扱い、それも、武藤レベルゆえ、おそらくメインイベントだったことだろう、って、大きなお世話かもだが。

 なお、主人公と同じ42歳で引退をした日本人選手は、筆者が以前、御仕事で作成させていただいたデータベースによれば、意外にも1人しかおらず、それは保永昇男。保永さん自身にインタビューした際、「髪の長い人に(引退するよう)言われましてね」と仰っており、これは当時の現場監督である長州力のことだが、要するに、余力の残しての引退だった。これは今回の父の跡を継ぐために引退をした主人公と通底する。保永はそのエネルギーを持て余すかように、その後、レフェリーに転身し、機敏な動きを見せていた。因みに、主人公と同じく、引退して家業を継いだレスラーとしては、例えば元新日本プロレスの小杉俊二(28歳で引退。実家のカメラ屋を継ぐ)がいる。同選手に関しては、腰の怪我での引退でもあるが、最後の試合から引退発表まで、2週間も経っておらず、類した治療をほどこすというよりは、家業を念頭においての道筋だったこともうかがわれよう。みちのくプロレスのヨネ原人も1999年、家業の建材屋を継ぐため、“山に帰った”が、こちらはその後、リングに戻って来きている。

 そして、妙な符号も。主人公が憧れたブロディの享年が、同じ42なのだ。ブロディの年まで戦ったという踏ん切りにも捉えられるかも。伏線の多いクドカンさんの脚本だけに、この辺りのドラマにも、そこはかとなく、期待したい。

プロレスと能の、具体的共通点!


 さて、今後の同ドラマの展開だが、実は先述通り、主人公は初回放送で引退したゆえ、もうプロレスネタは余り差し込まれないのでは?という懸念があった。ところがである。次回予告を見ると、道場のリングらしきキャンパスで、長州のラリアットを食らう主人公の姿が。やはり、プロレスと、家業の能を並走して、話が進むのではないか?さらに、前掲のHPの引用記事の続きには、こうある。

『プロレスってマスク(覆面)を被るから、お面を着ける能がいいねという話になって』(前出HPより)

 マスク(プロレス)と、お面(能)という、酷似要素。当然のことながら、両方とも、素顔を隠すことも可能であり、このファクターは意外とドラマの肝になるのではないかという気がする。

 そして、最後に特筆したいのは、他でもない、主人公のことである。プロレスを題材にした連続テレビドラマは、名作として知られる『輝きたいの』(1984年)や、『マッスルガール』(2011年)、『ここが噂のエル・パラシオ』(2011年)等々、少なくもないのだが、実はその大半が、女子レスラーが主人公なのである。これらには見た目や、人気面での打ち出しもあろうが、ここに来て、久々に男子プロレスラーが主役であるということに、機軸としての新味も期待せざるを得ない。

 あらすじにもあるよう、基本は父子のドラマなのだが、初回の後半、少々、泣けるシーンが。主人公と父の共通の趣味が、プロレス鑑賞だったのだ。実はクドカンさん、姉2人の3人兄弟。ところが進学などで家を離れ、父も単身赴任となり、小学5年生から中学1年生までは、母親と2人暮らし。その時のことだ。母である泰子さんは、クドカンさんと、体を張って遊んだという。

「プロレスをやって体を痛めたり、家の中でサッカーして障子を全部破ったり……。夫はおもしろい人で、怒るどころか『子どもと全力で遊ぶことは良いことだ。もっとやれ』と言っていました」(泰子さん。『朝日新聞』2007年9月8日・夕刊)

 最強の盟友である長瀬さんとの最後の連続ドラマの仕事は、他でもない、クドカンさんの自分史もそこかしこに刻まれていると見る。今度の視聴も、ぜひ楽しみにしたい。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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