2020/8/2 8:51

無敗なのに王座陥落!? 幻に終わった、『猛犬放し飼いマッチ』!新タイトルKOPW誕生記念、プロレス変則マッチ特集!

閲覧数:239

まだ評価がありません

8月29日の神宮大会で、KOPW王者、決定戦!


『レッスルマニア』と言えば、アメリカンプロレスに疎い方でもご存知だろう、WWEが毎年、春におこなう超BIGイベント。今年で36回目を数えたが、2000年4月のそれ、いわば、『レッスルマニア16』(正式名称は『レッスルマニア2000』)で、珍妙な出来事が起こった。

 目玉の1人は、前年11月にWWE(当時WWF)にデビューした、カート・アングル。日本でも数々の名勝負を残した猛者だが、この大会までの5か月間、なんと無敗で、しかも、WWFインターコンチネンタル王座と、WWFヨーロピアン王座の2つのベルトを保持していた。『レッスルマニア16』では、この2つの王座をかけて、トリプルスレット・マッチ。相手は、これまた日本に縁深き強者のクリス・ベノワとクリス・ジェリコ。3人同時にリングインし、誰かが勝てば、先ずその1勝目でインターコンチネンタル王座を、そのまま試合を続行し、次に勝った者がヨーロピアン王座を獲得するという変則ルールとなった。

 結果はまず、ベノワがジェリコを下し、インターコンチ王者に、続いて、ジェリコがベノワを下し、ヨーロピアン王者となった。正直、当時、「トリプルスレットマッチなんて、ゲームみたいなもんだろ」とタカをくくっていた筆者だが、この結果にはうなってしまった。なぜなら、アングル自体は、それまでと変わらず、無敗なのである。なのに、終わってみれば丸腰になっていたのだ。試合中、ベノワとジェリコが意図的にアングルを無視したシーンなどは特になかったが、あればあったで、それは2人の意味深長な狙いともなったことだろう。それまで、試合形式の遊戯性のみを見ていたかも知れないだけに、少々大袈裟に言えば、その試合形式の奥の深さに驚いた次第だった。

 新日本プロレスに、新たなタイトルが創設されることが7月28日、発表された(※ベルトは無し)。その名も『KOPW』。既報通り、出場選手が希望する対戦形式を持ち込んで、ファン投票によってそれを決定。8月26日の後楽園ホール大会で8人による1回戦を行い、勝ち上がった4人が8月29日の神宮球場大会で4WAY戦により覇権を争うといった趣向である。

 評判はふんぷん。提案者となるオカダ・カズチカ自体が、「今までのIWGPの戦い、新日本プロレスにふさわしくないタイトルだと思う」と会見で言明。蓋を開けてみるまでは、どうなるかわからないというのが正直なところだと思う。

 今回の当欄は、プロレスにおける変則マッチを特集。来たる『KOPW』に向け、その内包する魅力も探りたい。

決着変則マッチいろいろ


 通常のプロレスルールとは違う、いわゆる変則マッチが少しずつ増え始めたのは、特に平成を超えてからと言って良いと思う。大仁田厚率いるFMWの成功により、後発のインディー団体が増加。そして、それらも分裂に次ぐ分裂。今世紀以降は、あらゆる変則マッチが出尽くした印象だ。それは、団体同士の差別化も目的にあろうが、選手自体の魅力以外の付加価値を試合そのものに付け、楽しんで貰うという方向性の発露でもあった。

 数や種類が多く、とても網羅したり、分類出来るものでもないが、今回は便宜上、2つに分けてみたいと思う。『決着方法における変則マッチ』と、『それ以外の、試合形式そのものにおける変則マッチ』である(※私見、ないし、独自の見解です。ご容赦をば)。

 前者の種類を挙げていこう。先ず、文字通りの、『フィニッシュ技限定マッチ』が挙げられよう。ラリアット限定やサブミッション限定等々。アイスリボンでは、カルタアプリで選ばれた札の頭文字から始まる技でのみフォール、ギブアップが認められる『かるたマッチ』というのもあった。同じくアイスリボンの選手の生誕プロデュース興行では、定番の『コスチュームチェンジマッチ』というのもあり、これはその(誕生日の)選手のコスチュームを着用した選手は、その選手の持ち技をフィニッシュにしなければならないというルール。他、世羅りさプロデュース興行では、季節にまつわる、あるいは季節感を感じる技からのフォールのみがカウントされる『春夏秋冬デスマッチ』なんて試合も(餅や花粉による凶器攻撃が目立っていたが)。他、スピード感が出る『2カウントフォールマッチ』や、会場のどこでもフォールしていい、『フォールズ・カウント・エニウェアマッチ』(※別称多数)、吊り下げられたベルトを手中にすれば決着がつく『ラダーマッチ』、リングアウトのみなどという決着方法も、これに入るだろう。他、ノアの白GHC王座(グローバル・ハードコア・クラウン王座。※現在は封印)では、時の王者、秋山準が3連戦の防衛戦に挑んだが、「3勝で1回の防衛」という変則ルールにしたことも(相手は川畑輝鎮、泉田純、井上雅央)。

 多かれ少なかれ、エンターテインメント性が強く出るこれらの中で、一戦を画し、WWEなどの大勝負でも用いられるヒット形式が、『アイアンマンマッチ』。決められた時間内に、互いに勝敗を付け、その本数を競うものだが、60分なら60分戦うことが最初から義務付けられているわけで、まさにプロレスラーの面目躍如。WWEの10カウントのみの決着方法、『ラストマンスタンディングマッチ』もこの系統と言って良いだろう。

 そういえば、ユリオカ超特Qさんのインタビューをした際、氏が印象的なことを言っていた。「僕らお笑いのライブだと、必ずお客に向けてのアンケートがあるんです。質問事項は、『今日は、どの芸人が面白かったですか?』とかで、帰りに出して貰うんですけど、何でプロレス界は、こういうことをしないんだろうと思いますね」確かに、勝敗や試合順にかかわらず、その日に最も客の心を捉える選手はいるわけで、同意以外のなにものでない、秀逸な意見だった。

 必ずしもそれと同じじゃないにしても、そんな方向性を取り入れたのが、『ハッスル』などの団体が用いた、『観客ジャッジシステム』。広義に言えば、勝負の他に、観客の投票や拍手の大きさにより、勝ち負けを決めるというもので、近年も『HEAT-UP』において、時間切れ引き分けの場合のみ、この形式を用いる動きがあった(2018年6月2日大会)。

『時間』に着目した、試合形式も!


 続いて『(決着法を除く)試合方式における変則マッチ』だが、先ず、大きく捉えてしまうが、デスマッチの類が挙げられよう。他、各種ハンディキャップマッチ、3WAYマッチ、4WAYマッチ、イリミネーションマッチなどなど。大家帝国主催興行がおこなった、パートナーの手をつないだままで試合をするという変則ルールも、こちらに入るだろうか(2015年11月17日。3本勝負の1本目のみ)。また、10分1勝負など、時間に着目した試合もこちらに入れられよう。余談になってしまうが、個人的には、『HEAT-UP』で、普段教えている道場生の小中学生たちとプロレスラー側が、一種の発表会宜しく、4vs2のハンディキャップマッチで戦ったことがあるのだが、その時の『7分1本勝負』という時間が、何とも好きだった。正規の試合でなく、ダークマッチだったことも、当然とは言え、好感を持てた(2018年10月31日)。

 そして、時間に着目した試合形式で、まだ日本のメジャー団体で観られないのが、『ビート・ア・クロックマッチ』。簡単に言えば、数試合を対象に、相手を倒した時間の短さを競うもので、一番短い時間で勝利した選手が優勝となる。日本でもおこなえば、かなりスリリングになるのではないだろうか。

変則マッチも魅力にして来た新日本


 さて、今回の『KOPW』であるが、新日本プロレスと言えば、特に近年、絶対的な業界の盟主であるがゆえに、試合形式に色をつけることへの懸念があるのも確かに思う。

 とはいえ、そんな新日本プロレスも、昔はジャイアント馬場率いる全日本プロレスの対抗団体だったわけで、つまりはそもそも、王道に対する急進派。一連の異種格闘技戦を挙げるだけでも論を待たないが、旗揚げ2年目には早くもランバージャック・デスマッチを敢行している(1973年11月30日・アントニオ猪木vsタイガージェット・シン)。猪木とシンは、シンの得意とするインドの“泥んこ(の中の)レスリング”で勝負をつけようとし、日本ではこれが出来ないため、互いの体に油を塗って戦う、『オイル・デスマッチ』というのもやっていた(油が途中で乾いて塗り直していたが……)。場外に釘板を敷き詰めた猪木vs上田馬之助の『ネイル・デスマッチ』も知られるところ。因みにこの時、他の試合形式アイデアとしては、『リング下に猛犬を放つ』『リング下を氷漬けの水槽にしての、“落ちたら心臓麻痺デスマッチ”』があったそう。猪木vsはぐれ国際軍団(ラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇)の『1vs3(ハンディキャップ)マット』など、変則マッチの最たるものだろう。2000年代に入っても、蝶野vs高山善廣が金網デスマッチ、蝶野vs天龍でチェーンデスマッチを挙行。同じチェーンデスマッチは飯塚と天山の間でもおこなわれており、隠れた名勝負の声も。トップコーナーに上ってフィニッシュを決めようとする天山を、チェーンを引っ張って落下させる飯塚が光っていた。ケニー・オメガvsマイケル・エルガンのラダーマッチも記憶に新しい。他、総合格闘技によるバトルロイヤル『アルティメットロワイヤル』なんてトンデモ企画も。8人がエントリーされ、2人ずつが同時でシングルの格闘技戦をおこない、勝負がつくと、リング下で待機している残りの選手が名乗りを挙げるという形式だったが、文字通りの混沌ぶりだった。いずれにせよ、新日本の魅力に、オーソドックスな試合とは違う、かような変則マッチが寄与して来たことも事実である。

 とはいえ、WWEや、日本ではDDTなどの充実により、いわゆる変則マッチ自体は、既に出尽くしている印象も。心配点があるとすれば、先ずそこだろう。形式として二番煎じになってしまう可能性があるからだ。プラス、昔から新日本を見て来たファンからすれば、余りゲーム性のある試合に傾いて欲しくないという気持ちも、やはりあると思う。

 ただ、選手の知名度も出来事の波及性も、現状では他の団体と比べものにならないほどある新日本だけに、そちらを変則マッチというフォーマットに入れ込むことも可能ではないか。例えば、飯伏に若干の衰えを指摘されている棚橋が、自らアイアンマンマッチに挑むとしたら、それだけでドラマになるのではないだろうか。

 オカダ曰く、『KOPW』は、「すごく楽しくなると思います。期待していて下さい」。選手を活かし、ファンの気持ちに寄り添った試合形式と試合内容を、ぜひ期待したい。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

コメント

    まだコメントはありません。

おすすめ記事

新しいコメントを投稿する

 [PCから画像ファイルをアップロード]

関連付けられたタグ

なし
[タグを付ける]

<< 一覧に戻る