2020/3/13 10:15

新日本事務所の前にリングス?超満員でも終わってしまった某団体!WRESTLE-1活動停止!平成団体終焉の系譜!

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新日本事務所の前にリングス?超満員でも終わってしまった某団体!WRESTLE-1活動停止!平成団体終焉の系譜!
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所属全選手が、3月31日を持って退団!


 2015年の10月下旬、武藤敬司さんの取材を終えて、部屋の外に出た時だ。(あれ……?)見覚えある男性が、近くのロビーのソファに座っていた。違和感を感じたのは、その男性と武藤が、もともと同じ団体であったが、既に袂を分かっていたからだった。男性は、2年前の2013年まで“武藤全日本”の社長を務めていた、内田雅之さんだった。「えっ?なんでいらっしゃるんですか?」みたく問うと、内田さんはこう返された。「いや、近くを通ったから、ちょっと遊びに行こうと思って」本当に、それだけらしかった。武藤の団体、WRESTLE-1の事務所が入るビルでの話である。

 プロレス団体の事務所の位置は、わかりにくい(わかりやすい必要もないが)。渋谷から徒歩10分ほどのところに新日本プロレスの事務所があった時期、前田日明率いるリングスの事務所がその道筋にあったのを前田さん当人の取材で知った時は、大層驚いたものである。新日本の事務所に行くために何度も通っていたにも関わらず、気づかなかったのだ(当時のリングスは、前田の個人事務所的な意味合いが強かったとはいえ)。

 その点、WRESTLE-1の事務所はわかりやすかった。建築として最新ではないが、逆に歴史と由緒ある建物で、路上に立てられている地図にもちゃんと載っていた。1階は吹き抜けになっており、先の内田氏ではないが、寄りやすい、開放的な雰囲気もあった。

 そんな恵まれた環境にあったWRESTLE-1の活動停止、及び、4月1日の後楽園ホール大会を最終興行とすることが、2月29日、発表された。令和になってからは初と言っていいプロレス団体の解散であり、プロレス人気の復興が言われる近年だけに、衝撃的なニュースでもある。

 今回の当欄は、こちらを含め、平成以降の各プロレス団体の終焉の様態を精査。次代への警鐘さながら、考察してみたい。

会場が超満員続きでも、赤字で終焉?


「赤字の体質から脱却出来なかった」武藤敬司は会見でWRESTLE-1の活動停止理由を、そんな風に語った。実際、団体が店仕舞いに追い込まれるのは、この理由がほとんどであり、平成以降、ある程度の規模を持った団体で、これ以外の原因で解散になったのは、理想や思惑の違いから3派に仲違いした、第二次UWFと、若手が新天地を求めて団体を卒業した、藤原組(1995年)くらいだと思う。なお、拙著の類にも書かせて頂いたが、第二次UWFが最後の興行から、現実的に3派に分かれるまでの2ヶ月間、各選手のギャラ(月給)は前田日明が身銭を切って振り込んでいたという。金がないことでの苦労を、自身が第一次UWF時代に経験していたこともあるが、それだけに残念な分裂劇だった。

 さて、赤字による終結がほとんどと書いたが、驚いたのが『ハッスル』の後発団体だった某団体の活動停止理由も大きく言えばこちらだったこと。関係者筋によれば、負債は数千万円だったそうだが、興行は常に超満員だっただけに、少なくとも筆者にはかなり意外であった。つまり、「黒字になる興行ペースや規模なり、フォーマットではなかった」ということだろうか。なんとか存続している最中に、そこを見直せなかったか。観客の支持が熱い団体だっただけに、返す返すも残念に思う。

 同じく、見直しに欠けた部分を否定出来ないのは、2003年3月に長州力が旗揚げしたWJ。旗揚げシリーズの巡業先で、スタッフ1人ひとりにツインのデラックスルームが用意されたのは、もはや伝説化している。リングを作るスタッフ班がレスラーの別にいたり、事務所の賃料は月70万円以上……。「興行で収益を上げるコツは、いかにして無駄を省くかなのに、WJさんはそこをわかっておらず、むしろ逆を行ってしまった」とは、あるプロモーター氏の弁。2004年6月21日、熊本での試合を最後に、団体の幕を閉じた。

 4万人以上の観客を集めて神宮球場大会を大成功させた3ヶ月後に突然、最終興行を迎えたUWFインターナショナルの解散理由も同様(1996年12月に解散)。ただ、活動停止を告げる当時の鈴木健取締役の表情は意外に明るく、「負債は必ず返します。しかし、『返さなくていいよ』という債権者がいたら、ぜひ言って下さい(笑)」とし、報道陣を笑わせていた。“最悪の状態にならないうちに、返せる負債額のうちに”の団体停止と見た。事実、後の鈴木健氏によれば、この後発団体のキングダムでも借金を背負ったが、結局、完済。自身の持つ負債額を一億円以上とし(現実にこの額だったかは知らないが)、東京は用賀に、それをネーミングした串焼き屋『市屋苑』をオープン。今年で20年以上になるが、駅から徒歩6分ほどの立地ながら、常に混んでいる。「ウチは客が0だったのは、最初の年のクリスマスイブしかないんだ」というのが鈴木さんの口癖で、この店からの負債の返済は、まさに日々の奮闘の賜物だったろう。

 より冷静に状況を見極めていたのが、『リングス』を率いていた前田日明。2002年の2月の大会を当時の『リングス』の最終興行としたが、理由を「(放映していた)WOWOWとの契約が切れるので」とサバサバと語った。時はPRIDEを始めとする総合格闘技ブーム。出色の格闘ネットワークを誇るリングスの真価が発揮されるのはこれからだという気もしたが、有名選手たちのギャラの高騰が、既に業界内で話題となってもいた。前田が団体を閉めたのは、「無謀なマネーゲームに巻き込まれるのはゴメン」という心持ちもあったのかも知れない。

 以上の例は、確かに最終興行の話ではあるが、まだ良い方なのかも知れない。というのは、それが最終興行だとわからぬまま、団体が閉じる例もあるからだ。

突然の倒産例も。


「ハヤブサだ!」そんな客の声が響いた、2002年2月4日のFMWの後楽園ホール大会。だが、そんなはずはない。ハヤブサはこの3ヶ月前、頸椎損傷の大怪我を負い、入院中だったのだ。それは、ハヤブサのマスクをつけた外国人レスラー、サブゥーだった。サブゥー自身、初来日のリングはFMWであり、そして数年後には新日本プロレスでIWGPジュニア王座を奪取するほどブレイク。当時の同団体のエースであるハヤブサの不在を鑑み、サブゥーなりの心意気を見せたのだった。インディーの雄らしく、この日の大会には、本来は敵対するIWAジャパンの顔、ゴージャス松野が登場したり、DDTのアイアンマンヘビーメタル選手権試合が組まれたりと、バラエティ豊かなラインアップで大盛り上がり。観客動員は、主催者発表で2150人(超満員)を数えた。

 ところが、この11日後、FMWは活動停止してしまうのである。理由は、2度の不渡りによる、倒産であった。負債総額を聞かれた、当時の現場責任者の1人でもあった、冬木弘道は、こうコメントした。「(負債総額は、)社長の荒井(昌一)が個人で借りている額があまりに多いらしくて、なんとも言えないんだよ……」文字通り、突然の終焉。放映していた衛星放送の撤退、エースの離脱等、同団体が傾いた理由はさまざまだろう。だが、2度の不渡りを出した最大の理由は、フロント同士の意志の疎通の欠如ではなかったか。

 橋本真也率いるZERO-ONEも同様だったかも知れない。2004年の11月に橋本が、他の選手たちと袂を分かち、一人で負債を被る形で活動を停止。豪放磊落な橋本の性格が仇となったか、こちらも正確な負債額はわからず。「せめて、リングや練習器具や団体名は、分かれた選手たちに譲渡したい」と男気を見せた橋本だったが、翌日、大変なことが発覚。なんと、そのリングすら、第三者からの借り物だったのだ。

 しかし、その活動停止会見の夜、まさに(橋本真也の)ZERO-ONEとしての最後の大会に出場し、メインを締めた大谷晋二郎は、こう語った。
「『プロレスの教科書』、13ページ。色んな人生があるだろうけど、自分が決めた道が真実である。俺は“このリング”が大好きだ!」

最終興行は、せめてものケジメ


 以降、大谷は、ZERO-ONE MAX、ZERO1と、その屋号を守り続けている。同様に、FMWは、WMFとWEWが後を継いだ。

 天龍源一郎率いるWARは、1998年2月に団体としての活動を停止。「単純に、選手に給料が払えなくなったので」と、けれんなく理由を語ったのは、当時の社長の武井正智氏。WAR自体は、1990年に大企業・メガネスーパーが多額な資金を用意して旗揚げした『SWS』の後発団体。そのSWSが終了したのは1992年の6月だった。表向きは団体内のクーデターで選手らが分派したことになっているが、内実は収益が上がらないことでの終焉。クーデターはメガネスーパーの田中八郎社長の主導による、あくまで見せかけの演技だった。WARは前出の1998年の4月より、興行会社として断続的に大会を主催し、2006年7月、「ケジメをつけるため」(天龍)、最後の興行を挙行。沽券を守るためか、一芝居打ったSWSと比べれば、潔い、爽やかな終わり方だった。

 芦野、土肥など、有望な選手が多数いたWRESTLE-1の終了は、確かに残念だ。だが、現状を認識し、最終興行を行うという判断も一つの勇気であり、まさにケジメだろう。同団体で凌ぎを削った選手たちが新天地で輝くことを、願ってやまない。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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