2019/8/19 10:15

上野オークラ劇場9周年 ピンク映画に重ねるプロレス史

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上野オークラ劇場9周年 ピンク映画に重ねるプロレス史
4.0

冬の時代と呼ばれた一昔前からV字回復を果たした新日本プロレス。2019年には胃の痛くなる局面を乗り越えた業績が評価され、新日本プロレス・菅林直樹会長が朝日新聞主催『平成胃痛大賞』を受賞。現在も伝統の「キングオブスポーツ」の看板、スタイルを守りながらも新しい人材の発掘、演出を入れ驀進中だ。

プロレスと同じように、一時期真冬の時代を経験しながら光を浴びようとしているジャンルがある。ピンク映画という世界。端的に言えばエッチな映画というやつだ。

プロレスが総合格闘技という新たな波に押された時期があったように、ピンク映画はアダルトビデオ(AV)と巨大な敵に飲まれ一時は風前のともしびとなった。Netflix『全裸監督』が話題だが、80年代に現れた映画館に行くより手軽に見れるアダルト世界の登場は、下半身アウトなピンクよりももっともっと直接的な描写に男性客は流れ、全国のピンク映画上映館を激減させた。作り手もAVに続々流れていった。マニアの世界であったピンク映画はよりマニアの世界になっていく。空席の多くなった真っ暗な映画館は、男色界隈の方々の社交場となり俗にいうハッテン場に。2019年現在、都内のピンク映画封切り映画館は上野オークラ劇場だけ。定期的に配給しているのは上野オークラシアター系列であるオーピー映画だけという現状だ(数年に1本というペースで新日本映像も制作)。

オーピー映画は1962年に製作された日本で最初のピンク映画を配給した大蔵映画の子会社という老舗企業。プロレスが新しい血をどんどん入れ、新規客層を取り込んでいったように、オーピー映画も考えた。2015年からR-18作品をR-15編集し、新宿の映画館で集中公開する「OP PICTURES+フェス」を開催。この夏も8月23日からテアトル新宿で公開される。独特の雰囲気を持つオークラ劇場は新規のお客さんが入りにくい。女性や18歳以下の若者にも世界観を見てもらおうという考えから生まれた企画だ。

女優は演技力を磨きたいAV女優を抜擢。敵視するのではなく一緒に業界を盛り上げればいい。年間約36本製作という新作公開ペースは、並の配給会社ではできない数字だ。注目度が低くても黙々と裸をさらし、リングに上がる。ウン、このひたむき具合もプロレス的。

このころから映画祭で活躍しながらも、自腹で映画撮影をしていた新人監督、もっと自分の色を出したいという中堅監督が続々参入。濡れ場さえあれば笑いもホラーも感動作もありというピンク映画はプロレスに例えれば武者修行、自己鍛錬には恰好の場。そう、アダルトビデオが現れた80年代半ば以降のピンク映画は滝田洋二郎、周防正行、瀬々敬久といった名監督が生まれ巣立っていった。つまるところの原点回帰を始めたのだ。OPフェス2019では『今日、恋をはじめます』など青春映画の古澤健監督、オリジナルビデオ界でも活躍する山内大輔監督。ケータイ刑事銭形シリーズの佐々木浩久監督も作品を発表。2018年にプロレス映画『おっさんのケーフェイ』の谷口恒平監督の新作『やりたいふたり』も公開される。前作と違い実話系漫画を舞台にするのだが、ひとつの事象をまったく異なる証言で紡いでいくというプロレスファンが見ても面白い一作だ。

いずれも濡れ場があるということを守りながらも作風は様々。白いキャンバスを自由に彩る作品群。ひとつのジャンルの中に多様性があるという不思議な映画フェスとなっている。“ピンク映画っぽい”のは女優陣の本業と成人映画館で公開時のドギつく古めかしいタイトルくらい。いまや作風や監督名では一般映画との違いはわからない。

上野オークラ劇場・新館建設当時はいまさらピンク映画にウン億円?と言われ、3年でつぶれると揶揄されたそうだが、今年で築9周年。ハッスルに某老舗団体と揶揄されながらも蘇った新日本プロレスと少し重なる。新日本プロレスG1クライマックス2019の成功と輝きも、生え抜き組と飯伏幸太ら移籍組、そしてニューフェイスの3すくみで盛り上がったように思う。いつの時代も若き力と新しい血で伝統は引き継がれるのだ。

この記事を書いたライター: 漁師JJ

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