2019/7/8 10:06

「最強レスラー数珠つなぎ」で考える最強論【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】

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「最強レスラー数珠つなぎ」で考える最強論【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】
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『最強レスラー数珠つなぎ』は2016年9月から日刊SPA!で連載され、2019年3月17日、イースト・プレスから発売されたプロレスラーインタビュー集だ。

プロレスが流行っているらしい。そう聞いたライターの尾崎ムギ子さんは勧められた飯伏幸太vsヨシヒコ戦を動画共有サイトで視聴。井上雄彦『リアル』第13巻を読破。その結果、“今のプロレスは「最強より最高」を提供しブレイクした。お化け屋敷がベースを知らなくても楽しめ、なんとなく概要を知っているように、プロレスも細かなルールを知らなくても楽しめるものとなっていた。昔のプロレスと今のプロレスは違ってきている。”という内容を『いい男に抱かれたい願望が全開に!?プロレス女子急増のワケ』というタイトルでまとめ発表した。

反響は大きかったが噛みつかれた。本職のプロレスラー・佐藤光留選手から「書いた人間を絶対に許さない」と牙をむかれた。「強いか弱いかは試合が面白ければ関係ない」、そうファンに思われるのは構わないが、ライターという職業の人に「プロレスは強さなんて関係ない」と言われるとそれは違う。それは物書きに向かって「挿絵が面白いから、この小説は面白い」というのと同じでバカにしているとぶつけられたのだ。

尾崎さんは光留選手にアポイント。逆張りとまではいわないが、強さとは何かを改めて聞き、そして自分より強いと思う選手を数珠つなぎに紹介してもらう連載を開始する。けしてメンタルが強いほうではなく、むしろ男性恐怖症。出会う前にシュミレーションし、時におびえながら話を聞く尾崎さん。

登場選手は宮原健斗、ジェイク・リー、中嶋勝彦、鷹木信悟、岡林裕二、関本大介、佐藤光留、崔領二、鈴木秀樹、若鷹ジェット信介、石川修司、田中将斗、垣原賢人、鈴木みのる、小橋建太、髙山善廣、前田日明、佐山サトル、藤原喜明、藤原敏男。

誰が誰を紹介ししてつながったのかはぜひ本書を読んでほしいところだが、本書の読みどころは最強とは何かを巡るプロレスラーへのインタビュー集としてももちろん、インタビュー間を結ぶインターバルでこじれまくった筆者のライターとしての自信、女性としての自信をつける物語となっているところだ。最初はおどおどした筆致がいわゆるメジャー系レスラーや、ファンとも多く会話する大日本勢と出会い克服され、前田日明、佐山サトルといった面々では反面緊張感の嵐に。プライベートで格闘技選手と交際が始まったタイミングで会う、キック界のレジェンド・藤原敏男によるプロレスリスペクトがそこにいいクッションで挟まっている。

野球で一番強いチームはいつの時代のどのチームだと思いますか? これはルールがひとつでわかりやすいから、各人から答えは出やすい(もちろん悩むだろうしDH制有り無しでも変わるだろうが)。ただプロレスとなると、プロレスの中にも電流爆破からU系、PWFルールからルチャにデスマッチまで幅白くあるから答えは決して一つじゃない。ある選手は別のインタビューで(プロレスは)反則が5秒までOKなんだから拳銃持ってるやつが一番強いと答えていたが、大日本プロレスで拳銃を使う植木嵩行選手が静止後にけちらされていたことを思うとそうでもない。「結局、長生きこそが最強!」とはKAMINOGEでの藤原喜明選手の言葉である。

ルールという尺度や見る角度によってなにが最強なのかが変わるプロレス。だから最強が最高とは限らないし、もちろん最高が最強とも限らない。ある人には強さ=最強という考えこそも否定される。やられて立ち上がることが最強と説く人もいる。結論はひとつじゃない。連載を開始し、ライターのものの見方も変わったようだ。プロレスを考えること。それは人を成長させる哲学なのだ。

この記事を書いたライター: 漁師JJ

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  • かつて「弾むリング」って本もあった…上田篤「くるまは弱者のもの」にも通じる、専門誌系の、マスコミからは無視されているけどめちゃめちゃ面白い本だった。

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    (2019/7/15 13:44)
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