2019/5/31 10:21

プロレス実況で産み落とされる独特の単語よもう一度【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】

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プロレス、プロレスラーからは独特の形容詞や単語が紡ぎだされる。主にそれはプロレス実況を通してのものだ。

「実況はライトなスポーツファンにとってのガイダンス」。「Number」最新号の「スポーツ仕事人」コーナーでは実況アナウンサーを代表して清野茂樹さんが出演。こんな言葉で実況アナウンサーの役割を伝え、プロレス実況の特殊性が語られている。

プロレスとほかのスポーツでは実況に求められる役割がかなり違うと思います。視聴者が見ているテレビ画面に映し出されている状況を言葉で説明するのが実況アナの基本。(中略)かたやプロレスでは因縁の対決が実現するに至った経緯といったリング外の経緯も盛り込むし、言葉のチョイスも変わります。(文芸春秋刊「Sports Graphic Number」2019年5月30日 103頁

言葉のチョイスというのは「ブレーキの壊れたダンプカー」、「一人と呼ぶには大きすぎる、二人と呼ぶには人口の辻褄が合わない」といった比喩のお話。

これは古舘伊知郎以前と以後で大きく変わっていて、それ以前の、例えば力道山時代のプロレス実況はプロ野球実況と変わらない、「力道、果敢に体当たり」、「ここで空手チョップの連打です」等、ありのままをしゃべるスタイルなんですよね。これはそれこそ古舘フォロワーの清野さんの著書に詳しいのですが、歴史や試合会場の民俗ネタ、さらには「おおーっと!」など大きすぎる感嘆取り入れた芸にも近い「実況」は、その後のテレビ朝日スポーツアナだけならず、実況という世界に大きく影響を及ぼしました。

古舘実況はプロレスだけにとどまらず、「顔面ロマンチック街道 ミハエル・シューマッハ」、「音速の貴公子・アイルトン・セナ」、「俺を誰だと思ってるんだ走法 ナイジェル・マンセル」、「F1エキゾチックジャパン 鈴木亜久里」、「妖怪通せんぼジジイ ルネ・アルヌー」など何を実況しても紡ぎだされる比喩表現の組み合わせに。漫画「キャプテン翼」に(中学生の試合なのに)試合実況アナウンサーが登場するのも古舘アナの影響下だそう。

さて、時代は変わり2019年、現在のプロレス実況を見つめなおすと、試合展開が早くなったこともあり、やや原点回帰。新日本プロレスの実況模様を見渡せば、感嘆表現はありながらも、試合展開そのままを伝える傾向に戻ってきている気がします。技が細かく細分化され、そのまま伝えるだけでも技術力や資料が必要になってきていることもあるでしょう。地上波ならではの“変に例えて炎上”ということを避けていることもあり得るか。

ただ正直、いまどきの新日本プロレスのニックネーム「ザ・オクトパス ジョナサン・グリシャム」、「ザ・ヴィラン マーティ・スカル」、「The Headbanga エル・ファンタズモ」と単語そのまま系が、実況でも使われていることが多く、個人的には現地でそう呼ばれててもなんか足そうよと思ってしまう。現在進行形のスーパージュニア出場選手ならブラックタイガーの過去を暗喩する「暗闇のトリックスター ロッキー・ロメロ」などが秀逸か。もちろん今でもないわけではない、けれど少し少なくなったプロレス実況→そのまま二つ名採用という豊かな言葉遊びよ、もう一度とも思うのでした。

この記事を書いたライター: 漁師JJ

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  • 初期のSWSで木村匡也さんがやっていた、あの英語混じりのDJ風実況スタイルを引き継いで完成させてくれる人、誰かいないかな…。

    ID:11310583 [通報]
    (2019/6/9 6:46)
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