2018/1/11 10:21

この勝敗はベルトよりも重い《勝者》オカダ・カズチカ《敗者》内藤哲也

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この勝敗はベルトよりも重い《勝者》オカダ・カズチカ《敗者》内藤哲也
5.0
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20年以上プロレスを観戦してきて、とんでもない物を見てしまったという感想を抱いたことはこれまでも数回あった。
1999年の1.4東京ドームで行われた橋本真也vs小川直也の無効試合、全く新しいプロレスを予感させた2016年のリコシェvsウィル・オスプレイによる空中決戦もそうだった。
だが、そういった試合が霞んでしまう程に、オカダ・カズチカvs内藤哲也のIWGPヘビー級選手権試合は、試合を見終わった直後、いや内藤哲也の両肩がリングに着いたまま3カウントが数えられた瞬間、心にズシンと重い何かを落とされた気がした。

二人の試合は2017年8月に内藤哲也がG1 CLIMAXで優勝した瞬間に決まっていたも同じだと言える。
東京ドームまでの間にEVILがオカダ・カズチカに挑んだことを考えれば約3ヶ月に渡る前哨戦を繰り広げてきた。
10月の両国国技館大会から1.4東京ドームまでの期間は現在の新日本プロレスの鬼門とも言える空白の時間。
2017年のWORLD TAG LEAGUEの盛り上がり具合を考えても、オカダ・カズチカと内藤哲也のストーリーが新日本プロレスの勢いを止めなかったと言っていい。

この間、優勢に事を進めていたのは明らかに内藤哲也であった。
史上5人目の快挙となる2年連続の東スポプロレス大賞のMVPを受賞。
内藤哲也は2017年にIWGPインターコンチネンタル王座から陥落しており、形のある実績はG1 CLIMAX優勝のみ。
自ら参戦すると話していたNEW JAPAN CUPにもWORLD TAG LEAGUEにも参加できず、本来であればストーリーの中心から離れてしまってもおかしくない立場。
それでも内藤哲也はファンの支持という絶対的な後押しを身に纏うことに成功し、オカダ・カズチカを超える存在感を発揮し続けたまま、東京ドームの花道を歩いた。

強すぎてブーイングを飛ばされる王者。ファンが感情移入できないプロレスラー。
一方のオカダ・カズチカには負のレッテルが貼られ始めていた。
これと似た空気は2016年4月にも見られたものである。
絶大な会場人気を誇った中邑真輔、世界トップクラスのレスリング技術を持つAJスタイルズが離脱し、ファンは新たな景色を求め内藤哲也に夢を託した。

だが、オカダ・カズチカは自らに貼られた負のレッテルを飲み込んだ。
強すぎてブーイングされる王者でいい、自分と同じくらい勝ち続ける人間はいないから感情移入できなくて当たり前。
声援は内藤哲也が10、自分は0でも構わない。
そう話すオカダ・カズチカに強がっている様子は無い。虚勢を張っているようにも見えない。
東京ドームのメインイベントのリングには全てを乗り越えた孤高の王者が立っていた。

試合が始まると、そこには現在進行形の新日本プロレスのレスリングが広がっていた。
試合序盤、ロープワークからアームホイップに次ぐ攻防の中で、ゴロリと寝転んだ内藤哲也がペースを握る。
流れを内藤哲也に掴ませまいと、コーナー最上段へのドロップキックをオカダ・カズチカは早々に発射してペースを握り返す。
そして自身のフィニッシュムーヴに繋ぐための丁寧なプロレスが始まった。
よそ行きの、海外に向けた試合はセミファイナルのケニー・オメガとクリス・ジェリコが素晴らしい闘いを繰り広げた。
であるならば、自分達は新日本プロレスを代表する試合をしようという思いがあったのかもしれない。
緻密に計算された互いの技と駆け引きの応酬が繰り広げられる中、時間は過ぎていく。
2017年1.4東京ドームで見られたケニー・オメガとのマラソンマッチとは全く異なる試合展開。
オカダコールも内藤コールも無い。3万4千人を超える観客が新日本プロレスのツートップが魅せる闘いに見入っていた。
そしてスターダストジーニアスと呼ばれた頃の内藤哲也が顔を出した。
エプロンへの水面蹴り。避けられはしたが放たれたスターダストプレス。
だがオカダ・カズチカも譲らない。
エルボー合戦からの浴びせ蹴りにはジョン・ウー。オカダ・カズチカにもオカダ・カズチカのプロレスにプライドがあった。
カウンター式ではあったが最初にフィニッシュムーヴであるレインメーカーを被弾させる。
だが、コブラクラッチを切り返す形でデスティーノを放つ内藤哲也。この時点では勝負は五分であったと思う。
再びレインメーカーとランニングデスティーノが交錯する。

本当に追いつめられた時にしか見せないオカダ・カズチカの歯を食いしばった表情。
デスティーノを被弾し、再度正調式のデスティーノの体勢に入った内藤哲也をオカダ・カズチカが食い止める。
勝利への執念で旋回式ツームストンパイルドライバーを放ち、正調式のレインメーカーでオカダ・カズチカは勝者としてのゴングを。内藤哲也は敗者としてのゴングを聞いた。

何が二人の勝敗を分けたのだろうか。
内藤哲也はG1 CLIMAXで優勝し、東京ドームでのIWGPヘビー級王座挑戦権利証を手にしてから、一度もベルトが欲しいと口にしなかった。
代わりに内藤哲也が口にしていたのは、東京ドームのメインイベントに立つという中学生の頃に抱いた夢。
そして東京ドームという大舞台での大合唱の2つだけ。
2016年4月にIWGPヘビー級王座を獲得し、宙に放り投げてから内藤哲也はベルトを必要としないプロレスラーというアイデンティティを持った。
無冠の状態でのMVP受賞という事実が、内藤哲也の自信に拍車をかけたのは確か。
だから内藤哲也はベルトを失った時にオカダ・カズチカの真の姿が見えると言ってのけたのだろう。

一方のオカダ・カズチカはベルトへのこだわりを強く持っていた。
シングルベルトが複数設立され、選手権試合が減った影響で防衛記録は最多防衛には未だ届かないものの、自身が持つのは史上最長の保持期間。
棚橋弘至、AJスタイルズと争い、最後に勝ち残る形でベルトを腰に巻いた。
オカダ・カズチカは王者であることを誇りに思っているはずだ。

勝者オカダ・カズチカ。敗者内藤哲也。はっきりと結果が出た。二人の明暗を分けたのは、新日本プロレスを先に進めるという思いの差だったのかもしれない。
オカダ・カズチカは34995人の観客を集めても満足しなかった。
まだプロレスを大きくする。新日本プロレスを広げていく。
そんな思いをはっきりと口にした。
内藤哲也が勝利していたら、34995人の大合唱で満足してしまったかもしれない。
新日本プロレスの天井がうっすらと見えてしまったかもしれない。
だが、内藤哲也の気持ちも全く折れていないのだろう。
東京ドームのメインで勝つのは気持ちいいぞ。そう言われた内藤哲也はニヤリと笑って見せた。
それはまるで「次はその気持ちを味わわせてもらおうか」と言っているようだった。

次へ。プロレスを未来へ。
オカダ・カズチカと内藤哲也の闘いは、きっと2018年1月4日から始まったばかり。

この記事を書いたライター: シンタロー

コメント

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  • 素晴らしい内容でした!カブロン✴︎

    ID:3863647 [通報]
    (2018/1/12 6:01)
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  • 順当に考えれば勝っていたのは内藤だったけど
    まさかの展開だったな

    内藤が燃え尽きないか心配

    ID:6202697 [通報]
    (2018/1/13 21:52)
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  • 内藤が燃え尽きないように、まだ宿題を与えたということ。
    しかし、内藤が腐らないように、次のドームまでは王者はオカダでも、主役は内藤で行くということ。
    ブッカーの、来年のドームまでの計画性は素直に評価するが、人気も顔ぶれも水モノの世界では、今のベストで攻めないと、来年には価値が下がっているかもしれない。
    ブッカーは一流だと判ったが、ロマンチストではないことも判った。

    ID:2107967 [通報]
    (2018/1/14 6:19)
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  • どんだけオカダ推しなんだよ。新日はよw

    ID:6198630 [通報]
    (2018/1/16 21:04)
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