2017/10/31 11:56

あの三沢も思わず御礼。杉浦が語る、総合格闘技とプロレスの違いとは?! 4か月ぶりに復帰!杉浦貴特集。

閲覧数:15509

あの三沢も思わず御礼。杉浦が語る、総合格闘技とプロレスの違いとは?! 4か月ぶりに復帰!杉浦貴特集。
4.4
最新のコメントに移動

拳王と組み、中嶋勝彦&LEONA組と激突!


「プロレスラーは、最強でなければならないという意識はありますか?」

 記者がそんな質問をすると、彼は答えた。

「全く、ないですね」

 2002年、彼が初めて、総合格闘技「PRIDE」に出陣した時の言葉である。

 その名は杉浦貴。アマレスのグレコローマン・スタイルにおいて、1995年、全日本選手兼82キロ級制覇、1994年、97年、99年、国体制覇という実力者にて、ついた異名は、“方舟のヒットマン”。その肩書きどおり、三沢光晴は最後の新日本プロレス出場(2009年1月4日・vs中邑真輔&後藤洋央紀)において彼をパートナーに指名。惜敗も、躍動した杉浦に、試合後、三沢は「ありがとう」と自ら握手を求めた。

 その杉浦が10月28日(土)、4か月ぶりに復帰した。元GHCヘビー級王者でもあり、2010年のプロレス大賞MVPでもある杉浦。だが、冒頭の総合格闘技出陣のやり取りの後には、こう言葉を続けている。「(総合格闘技出場にあたり、)プロレスを背負う気も、さらさらないですね」

 今回の当欄は、そんな杉浦の根底にある、プロレス観に迫りたい。

最初は、初代タイガーマスクのファンだった杉浦


 元々、大のプロレス好き少年だった杉浦。しかし、アマレスラー・宮原厚次を知ると、徐々にそちらに注力。気づくと、オリンピックを目指せるところまで来ていた。だが、アトランタ五輪(1996年)ではあと1勝で出場を逃し、2000年のシドニー五輪では、前年、大学生に負けて夢が潰える。既に29歳になっていた。2000年、全日本プロレスに入り、直後にNOAHに移籍する。

 話しは飛ぶが、2012年8月、日本武道館でDDTの竹下幸之介が圧巻のデビューを飾った際、筆者は少なからず興奮し、隣の「スポーツナビ」のT記者に、「これは良いデビューになりましたね。満点じゃないですか?」と話しかけたことがあった。T記者は、明快な返答を残した。「良かったけど、杉浦のデビュー戦には負けますね」

 そのデビュー戦は伝説化している(2000年12月23日、杉浦&井上雅央&力皇vs森嶋&金丸&志賀)。リングに上がるなり、ニタリと笑い、ゴングが鳴ると同時に、人差し指をクイクイと内側に動かし、「来い来い」と、相手を挑発だ。不遜かつ、傲岸な態度。そして、新人離れどころか、中堅選手以上の試合運び。

 2003年には、念願の自身初タイトルを獲得した(GHCジュニアヘビー選手権)。勝利の瞬間、リングに飛び込み、杉浦を肩車したのは本田多聞だった。ロス五輪、ソウル五輪、バルセロナ五輪と3回連続出場したアマレス界のレジェンド。実は杉浦の(全日本)プロレス入りに尽力したのが、多聞だったのだ。杉浦は、そのフィニッシャーも、アマレス界の泰斗にならった。カート・アングル(アトランタ五輪金メダリスト)のオリンピック・スラムと同型の技を使ったのだ。そして、同技を、こう名付けた。「オリンピック予選スラム」と。

総合格闘技では高評された杉浦だったが……。


 先述したが、デビューから2年後、総合格闘技に初進出するも、ダニエル・グレイシーに判定負け。そのまた2年後、ジャイアント・シルバ戦には勝利したが、その好結果も、プロレスのリングでは上手く反映されない。仲の良い“帝王”、高山善廣が付けた愛称は「おすぎ」だったが、同名の映画評論家の明瞭な批評とは正反対に、こちらのおすぎは、デビューして数年、プロレスでは奥歯に物の差し挟まったようなコメントが続いた。何より、自分のフィニッシュを、「オリンピック予選スラム」と言ってしまう自虐。

 丸藤、KENTAに代表される、イケメン勢力に対し、GHCのキャバクラ王座を開設(?)。東京スポーツ紙面を飾る、ユニークなコメント。活かしどころを自分で見つけられることこそ、プロレスの美点。しかし、内心には、溜まるものがあったのだろう。杉浦が、“帝王”に居酒屋で愚痴ったのは、そんな時だったという。

「なんでこう、上手く行かないんですかね?」

「……」

 黙って聞いている高山に、杉浦は続けた。

「俺、最近、思うんですよ、(プロレス)辞めてもいいかな?って…」

 しかし、この言葉の裏では、杉浦以上の失意を感じている人間がいたのである。

“おすぎ”をやりこめた、“帝王”の一言。


 NOAHが旗揚げして数年したある日、1年に一度しか行かない地方(特に名は秘す)のために、ファンとの親睦会が開かれた。和気あいあい、笑顔笑顔、ざっくばらん……。宴もたけなわになった頃だった。あるいは、「何か要望とか、ない?」と選手側が聞いたのかもしれない。ファンからの質問タイムとなった。と、おずおずしていた、ファンが、切り出した。

「手を…」

「ん?」

「手を抜いてませんか?」

「…はあ…?」

「NOAHは、手を抜いてませんか?地方で」

「?!」

 エース格のレスラーもいる前で、そのファンは、粛々としつつも、厳然と述べたという。

「NOAH中継を見て、NOAHが好きになった。チケットを買って……僕はテレビで見たような、熱くて激しい試合が、沢山見られると思ってた……」

「……」

「でも、いざ会場で見てみたら、テレビと違ってた。なにか、熱くも激しくもなくて、笑いに走る試合が多くて……」

「…!!」

 この時の食事会の輪の中に、杉浦もいた。それを経ての高山への苦悩の吐露。瞬間、親友である高山の顔は、“帝王”のそれへと変わった。

「おすぎよ、お前な。……グチグチ言わないで、やれってんだよっ!お前、プロレスラーだろ?! 愚痴る前によ、お前がそれを、リングにぶつけてみせろよっ!」

2009年の翌年、プロレス大賞MVPを受賞


 2009年12月6日、杉浦は潮崎豪を下し、自身初のGHCヘビー級チャンピオンに輝いた。「NOAHが来年で10年目。俺も、キャリア10年。オリンピックで夢破れて、『また一花咲かせたい』と思ってやって来て、10年目で掴んだものだから、嬉しいです」と、リング上でその感懐を述べた杉浦。直後にリングアナと、以下のようなやり取りをしている。

――武道館のメインは、初ですよね?

「僕の中では、変わらないです。ドームでやろうが後楽園ホールでやろうが、臨む気持ちは一緒です。お客さんを満足させようと思ってやってるんで」

――次の夢は?

「お客さんに、満足して帰って貰えれば」

 2009年と言えば、NOAHの地上波中継もなくなり、三沢光晴が永眠した年。バックステージでも、引き続き行われたインタビュー。新GHC王者・杉浦は、この年の最後の言葉を、こう締めた。

「(自分の使命は、)見に来てくれる、応援してくれるファンを大事に、毎試合、毎試合、地方でもいい試合をすることですよ」


「単純に、スケジュール的なことですよ」

 そんな風に杉浦が答えたのは、冒頭のインタビューで、「何故今回、PRIDEに出るのか?」を聞かれた時。その後に、サラリと続けた。

「僕の本業はプロレスですから、巡業に穴をあけてまでやることではないと思っています」

 そして、プロレスと総合格闘技の違いについて、こうも語った。

「総合は、結果だけ。プロレスは、お客さんを、どれだけ満足させられるかというやりがいですよ」

 NOAHはここに来て、真の意味で頼れる男の復帰を得たと言っていいだろう。

 多難に襲われた2009年最後のビッグマッチのメインで、屈指の好勝負の末、潮崎を沈めた杉浦の決め技は、雪崩式の、オリンピック予選スラム。フィニッシュの瞬間、武道館の最上の大歓声が、杉浦を包んでいた。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

コメント

最新のコメントに移動
  • 文章がもう少し上手く構成されていれば良かったのですが

    ID:5533882 [通報]
    (2017/11/1 2:15)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • 丸藤とのタッグ、好きだったなー

    ID:5534224 [通報]
    (2017/11/1 2:55)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • 華が無いのは致命的…

    ID:4398897 [通報]
    (2017/11/1 14:18)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • 面白い存在だなとは思います。強さを感じるし。その強さを、もっと面白く伝えてくれたら。他のノアの選手にも言えるけど、なんとなく殻に閉じ籠ってる感じがあるので。せっかく凄い人揃ってるのに勿体ないなと思います。

    ID:1144401 [通報]
    (2017/11/1 15:04)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • 新日本よりストロングスタイルを体現する男。自分は新日本ファンですが杉浦だけは認めざるを得ない。

    ID:5555110 [通報]
    (2017/11/2 14:06)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • 杉浦頑張れーーーーーーでも無理だけはするなよ、書いといて自分でもなんだけどこれがファンの正直な気持ちかな。

    ID:653816 [通報]
    (2017/11/3 2:30)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • ヒール化してだいぶ良くなったけど元来の生真面目さが出過ぎてる
    新日本で言えば裕二郎みたいな

    ID:2545793 [通報]
    (2017/11/12 17:48)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


  • 鈴木軍に見捨てられたポンコツが何だって?

    ID:5740211 [通報]
    (2017/11/20 19:04)
    0 0
    賛成:0% / 反対:0%

    Loading...


おすすめ記事

新しいコメントを投稿する

 [PCから画像ファイルをアップロード]

関連付けられたタグ

なし
[タグを付ける]

<< 一覧に戻る

プロレスが好きな人はフォロー!
「ぼくらのプロレス」ならではの情報をお届けします。