2017/2/8 10:26

オカダ・カズチカvs鈴木みのるは新日本プロレスによる実験だったのか。WWEに盗み出せない純日本産のプロレスリング

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オカダ・カズチカvs鈴木みのるは新日本プロレスによる実験だったのか。WWEに盗み出せない純日本産のプロレスリング
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2017年2月5日の北海道立総合体育センター北海きたえーるのメインイベントで行われた、オカダ・カズチカと鈴木みのるによるIWGPヘビー級選手権試合。
今回の試合に関しては1ヶ月前の1月5日、後楽園ホール大会に鈴木軍が約2年に渡る出向から帰還。
オカダ・カズチカを襲撃することで、様々な段階を飛び越えての挑戦となった。
前回の挑戦者であるケニー・オメガが2016年のG1 CLIMAXで優勝し、挑戦権利証を2回に渡って防衛した上で挑戦したことを考えると、早急な印象が否めなかった。

2016年の2月にも同じようなシチュエーションで後藤洋央紀が挑戦しているが、この時はブーイングの嵐であった。
あの中邑真輔の壮行試合ですら、後藤洋央紀がリングインするだけでブーイングが巻き起こる。
この時のブーイングは明らかに後藤洋央紀に対する「分不相応だ」という意味合いが込められていた。

そして鈴木みのるにも、昨年の後藤洋央紀以上のブーイングが飛んだ。
だが、ブーイングの意味合いが異なっていた。
当然「分不相応」という思いの込められた罵声ではない。
2年に渡り新日本プロレスのリングを離れていても、鈴木みのるはプロレスリング・ノアの最前線に立ち、自分の団体ではないプロレスリング・ノアを盛り上げてきた。
新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアと渡り歩いてきた鈴木みのるは、自身の上がっているリングが一番面白いと言い続けてきたのだ。
だからこそ、現時点で最強の挑戦者、最強の外敵としてオカダ・カズチカの前に立つことができたのである。
新日本プロレスファンはそんな鈴木みのるが怖かったのではないか。

現在の新日本プロレスにはヒールユニットが複数あれど、CHAOSは既にヒールユニットとしての色を失ってしまったし、Los Ingobernables de Japonはヒールでありながらファンを大切にしており、リーダーの内藤哲也はファン目線で正論を発するダークヒーロー的な側面が強い。
ユニットとして最大勢力を誇るBULLET CLUBですらファンに愛されていて、CHAOS、Los Ingobernables de Japon、BULLET CLUBの3ユニットは、あくまで新日本プロレス内のユニットという印象が強い。
そんな中、新日本プロレスに現れた鈴木軍というユニット自体がファンに嫌われることを厭わず、汚い言葉になってしまうが、粗暴というのに相応しい立ち振る舞いを見せている。
この2年間に新日本プロレスに無かった要素が一気に雪崩れ込んできたのだから、ファンが戸惑ってしまうのも仕方ないのかもしれない。

そして試合内容まで、ここ最近の新日本プロレスに無い光景が繰り広げられた。
試合序盤こそ怒りに任せて場外戦を仕掛けるなど、試合をリードしていたオカダ・カズチカ。
しかし、膝への攻撃が始まると一転して受身に回ってしまう。
これは正直、試合のクライマックスまで続いてしまった。
反撃に転じても、膝の痛みから単発に終わり、鈴木みのるの関節技地獄が待っている。
シリーズを通して、そして調印式でまで徹底的にオカダ・カズチカの右膝を痛めつけた鈴木みのる。
膝攻めをめぐる攻防としては、2017年の1月4日東京ドーム大会で行われた内藤哲也と棚橋弘至の試合が記憶に新しいが、この試合とは緊張感が明らかに異なっていた。
鈴木みのるが再三に渡って繰り出したヒールホールドはヒールと名付けられているが、実際にダメージを与えるのは膝の靭帯であり、内側側副靭帯または外側側副靭帯を損傷させる可能性が高い。
危険な技であるからこそ、ブラジリアン柔術、MMAルールを導入する前のパンクラスやリングスでも一時期禁止技となっていた。
内藤哲也と棚橋弘至の膝攻めが相手の機動力を損なわせ、勝利を手繰り寄せるためだとしたら、鈴木みのるがオカダ・カズチカに対して行った膝への攻撃は、右足を破壊するためのもの。
試合前、そして試合中まで「切れるぞ」「折れるぞ」と脅し続けることによって、新日本プロレスのリングから薄れていた、関節技による緊張感と殺気を取り戻すかのようであった。
オカダ・カズチカが普段放つツームストンパイルドライバーの持ち方を、ゴッチ式のものに変えたのも裏目に出てしまい、すぐさま体勢を入れ替えられての脚関節。
まるで鈴木みのるの「お前、そんな色気を出している場合か」という声が聞こえてくるようにギリギリと膝を攻めたてた。

だが、オカダ・カズチカはもはやただのトップレスラーではない。
新日本プロレスを、プロレス界を背負っているという自負を持ったプロレスラーだった。
近年で一番の打点の高さと思えるようなドロップキックを放ち、普段は決して見せない張り手は鳥肌が立った。
張り手といえば、ゴッチ式パイルドライバー、スリーパーホールドに並ぶ鈴木みのるを代表する技である。
ここまで一方的に攻め立てられてても、オカダ・カズチカは鈴木みのるの世界に染まることを選んだ。
昨年の丸藤正道とのIWGPヘビー級選手権以降、相手の世界に敢えて入り込むという手法は、オカダ・カズチカのプロレスラーとしての幅を広げたように思う。
それはまだ、全身をどっぷり漬けているとは言えないし、小手先のように見えるかもしれない。
しかし、2016年前半までのオカダ・カズチカは自身の得意技を随所で繰り出して、試合中の自身をファンに印象付け、相手が9割型試合を作っていても、レインメーカーという必殺技でそれを塗り替えるという手法しかとれないように思えてしまう部分があった。
既に日本プロレス界のトップに君臨しながら、まだ伸び白があることが末恐ろしく、また期待できる部分でもある。

今回の試合もオカダ・カズチカのレインメーカーが鈴木みのるの首を狩りとり、ベルトを防衛。
マイクアピールではタイガーマスクWとの防衛戦というNEXTまで飛び出し、ハッピーエンドで終わったはずであった。

それでも、会場の雰囲気がいつもの新日本プロレスではない。
プロレス女子という言葉を生み出した新日本プロレスが見せてきたのは、WWEをモデルにした適度に刺激のあるスポーツライクでわかりやすいプロレスである。
だが、オカダ・カズチカvs鈴木みのるは「適度」を超えた刺激に満ちていた。
だからこそ、観客は試合中に声を失ってしまったのではないかと思う。
試合中に、それもメインイベントであそこまで静まる新日本プロレスの会場は久しく見ていない。
これまでの新日本プロレスがスポーツをテーマにした映画であるなら、オカダ・カズチカvs鈴木みのるの試合はホラー映画であったように思える。
主人公が怪物を打ち倒すことに成功し、安堵のひと時を得ているような雰囲気があった。

筆者は今回の試合を見ていて、鈴木みのるが以前『KAMINOGE』という雑誌のインタビューで、WWEが日本産のプロレスを盗みにきている旨のコメントを出していたことを思い出した。
WWEはジャパニーズスタイルのプロレスを盗むために、日本のトップレスラーを引き抜きにきているのだと。

WWEはジャパニーズスタイルのプロレスを新たなビジネスの種として育てようとNXTを盛り上げてきた。
暗黒時代を切り抜けた新日本プロレスはWWEを参考にして復活を果たした。
そして、新日本プロレスは2017年7月にG1 スペシャルとしてアメリカ進出を発表している。
2つの団体のカラーが近づいてきている中で、新日本プロレスはWWEの本拠地であるアメリカに再進出するのだ。
筆者はその道のスタートとして、オカダ・カズチカと鈴木みのるの試合は行われたのだと感じた。
この試合はプロレスというジャンルからUWFが、そしてMMAが生まれた日本だからこそ成立した試合。
WWEが盗みたくても盗めない純日本産のプロレスなのだ。

同じようなストーリーが展開され、同じような面白さで、登場人物として見慣れた俳優の出演する映画と、見慣れない異国の俳優が出演する映画なら、貴方はどちらを見ようと思うだろう。
だが、見慣れない異国の俳優ばかりが出演していても、目新しいストーリーの展開する映画なら。
WWEに興味を持っていないスポーツファンを取り込めるかもしれないし、あわよくば、NXT以上のジャパニーズスタイルを求めるファンを、奪い取れるかもしれない。

これまでの新日本プロレスはスポーツライクな激しいプロレスがあり、ルチャリブレがあり、田口JAPANのようなコメディの要素もあった。
会場の観客や、新日本プロレスワールド、ワールドプロレスリングの視聴者、目にした人々を幸せにして、また見たいと思わせる世界がそこにあった。
だが、プロレスというジャンルはそれだけではない。
今回の実験が成功したのか、失敗したのかはまだわからない。軌道修正が行われるかもしれない。
それでも、既存のファンにそっぽを向かれるかもしれないというリスクを受け入れた上で、プロレスの怖さという一度は排除された世界観を取り入れようという新日本プロレスの姿勢を筆者は支持したいと思う。

この記事を書いたライター: シンタロー

コメント

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  • G1はアメリカ開催しませんよ

    ID:357034 [通報]
    (2017/2/8 14:09)
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  • 一部内容に誤りがありましたので、訂正致しました。
    ご指摘いただきありがとうございます。

    筆者

    ID:1869532 [通報]
    (2017/2/8 14:43)
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  • みのるは立派なヒールだと思うが、それで満足するのはマニアックなファンだけになってしまったのだと思った。刺激的な戦いを求めてプロレスファンになる人はもういなく、ある程度の安心感の中で試合を見たい人が増えた。エンタメ寄りの試合の方がウケる。
    先日の試合には昔のような恐怖と危機感がありヒートする客もいたのだが、オカダ勝利により新日は結局一時の味変えで終わらす気だろうと予想できる。
    時代が違うからしょうがないと思うが、鈴木みのるはこれからも同じスタイルを続けるのだろうか。個人的には、あぁいうレスラーが一人いる事は新日にとっては財産だと思う。

    ID:1091830 [通報]
    (2017/2/8 14:54)
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  • キャラクターだけじゃない。全く違う試合スタイルの選手がいて、多様な「色」を見せる事ができる。それがWWEに真似できない新日本プロレスの強み。俺はまだ18だけど、鈴木みのるは好きな選手の一人だし、あの試合でも個人的にはかなりヒートアップできた。

    ID:2782788 [通報]
    (2017/2/8 16:05)
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  • オカダ対オメガの46分超を意識して、無理矢理40分を超えさせたという印象を受けました。
    そのために、サブミッションにかかっている時間で引っ張ったような。
    試合時間は30分程度で十分だったと思います。
    46分超を意識し過ぎると、怪我も含め、よい方向にはいかないと感じています。

    ID:401908 [通報]
    (2017/2/8 20:51)
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  • あの試合でオカダを更に嫌いになり、逆にみのるの印象が良くなった人が多いはずだが
    果たしてどうだろう?

    ID:2675568 [通報]
    (2017/2/9 0:52)
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  • オカダのこういった試合を見て毎度思うのは「オカダを真のスターにしたいなら一旦どん底に落とすべき」ということ
    防戦一方だったのにハルクアップからのあっさりレインメーカーではちょっとね…
    今回のみのる戦で言えば、ゴッチ式→関節技でタップ負け、くらいの屈辱負けがあってもいいと思った
    そんでベルトから少し離れて、G1から調子上げて秋頃みのるにリベンジって感じで
    とにかく言いたいのは、このままじゃ「絶対王者のオカダ」で通すのは無理ですよ新日さんってこと

    ID:2898028 [通報]
    (2017/2/9 4:20)
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  • みのるはあくまでも繋ぎじゃないの?
    アメリカ前にはケニーに渡すだろうし、その時にオカダを落とすことだってできるし。
    去年も内藤に負けた時点で、徹底的に落としておくべきではあったよね。

    ID:2529769 [通報]
    (2017/2/9 10:17)
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  • 会場が久々の冬の札幌出しチケットが余ってたみたいだから客のレスポンスは騒がしくならないのは予想できた しかも2年居なかった鈴木みのるが相手じゃ新日本しか見てない客は声を出しずらいかな G1の開幕戦みたいな大興行やってる会場にオカダ対鈴木みのるを当ててきても客のレスポンスはあまり期待できないよね 何かサプライズがあれば別だけど 40分もやるほどの見せ場も大した無かったように感じたし

    ID:2103858 [通報]
    (2017/2/16 0:58)
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