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リングにいたのは強い強い棚橋弘至。過去の自分に戻りかけた内藤哲也の示した敬意

リングにいたのは強い強い棚橋弘至。過去の自分に戻りかけた内藤哲也の示した敬意

掲載日:2017/01/10 10:39 閲覧数:9763

4.4
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2017年1月4日の新日本プロレス東京ドーム大会のセミファイナルで行われた、内藤哲也vs棚橋弘至によるIWGPインターコンチネンタル選手権試合。
2016年11月、この試合が決定するまで棚橋弘至は東京ドームでの居場所を失っていた。
それは東京ドームで意義のあるカードが組まれるような、テーマを持った一年を過ごせなかったことを物語っているようであった。
絶対的なエースの棚橋弘至が怪我に泣かされ、ケニー・オメガやSANADAの踏み台にされていく。
大事な試合でほど勝利することができない。
リングに集中しようとしても、ドラマ出演などのメディア出演の仕事は立て続けに舞い込んでくる。
プロレス界の広告塔に自ら進んで名乗りを上げ、名実共にその地位に就いた故の苦悩。
そんな棚橋弘至が最後にすがったのが、自身とは対照的にたったの1年強でスターダムにのし上がった内藤哲也であった。

内藤哲也が過ごしてきた2016年は改めて書き表す必要も無いと思う。
IWGPヘビー級のベルトを腰に巻き、中邑真輔ロスを払拭させ、1年間に渡り試合で、マイクで、雑誌で、そして会見で、全局面でプロレスファンを楽しませてきた男。
東京ドームに設置された楕円形のビジョンが内藤哲也の目を表すための形なのでは、と思い込ませてしまうほどの活躍を見せてきた。
新日本プロレスグッズの売り上げ10億円の内、2億円がLos Ingobernables de Japónグッズによるものである。
そんなデータからも内藤哲也の勢いが証明されてしまう。
二人の勢いの差を示すように試合前のコメントでも常に優勢なのは内藤哲也であった。

少し予断になるがここでメインイベントを争うファン投票を内藤哲也が要求しなかった理由を筆者なりに推測したので書いておきたい。
内藤哲也がヒールらしい試合、言動を貫きながらファンからの支持を勝ち得たのは、常に正論を発してきたからである。
ファンが少しでも疑問に思う事柄に容赦無く切り込んでいく。
オカダ・カズチカの2億円プロジェクト、CHAOSが優遇されている現状を批判し、WORLD TAG LEAGUE前に東京ドームの話題が出れば、東京ドームよりもWORLD TAG LEAGUEに集中すべきだと言ってのけた。
制御不能というキャラクター性を維持し、反則をし、仲間を介入させる。
それでもファンを最優先に考えている姿勢が支持を集める理由である。
だからこそ、物議を醸すであろうファン投票の実施を自身から要求せず、棚橋弘至に一任したのだと筆者は思っている。

話を試合に戻すと、二人のシングルマッチで最初に際立ったのは、2016年を耐え忍んだ男、棚橋弘至の強さであった。
試合序盤こそ内藤哲也の膝攻めに苦しんでいたものの、2発目の唾攻撃で表情が一変。
ロープを利用したスイングDDTを防いでからの、ロープ越しドラゴンスクリューで流れを掴んでしまった。
内藤哲也も反撃を試みるが、全ての攻撃が棚橋弘至の肉体に吸収されていく。
そこからしばらくの間、内藤哲也はLos Ingobernables de Japónを結成してからのスタイルでなくなっていった。

反則もせず、挑発もしない。仲間の介入も行われない。正統派の攻防の中で放たれる、雪崩式フランケンシュタイナー、ジャーマンスープレックス、グロリア、膝固め。
ヒールターンする前の得意技が通用せず、棚橋弘至に反撃されていく。
表情だけは現在のものを保ってはいた。
正確には現在の不敵な表情を保とうとする焦りから、やり過ぎていたくらいだった。
自身を巻き添えに時代を引き戻そうとする棚橋弘至への抵抗。
そんな内藤哲也の姿は、ヒールターン以前、夢を語ってブーイングされ、オカダ・カズチカに追いつけなかった、悲壮感漂う青年に戻ってしまうのでは、とすら思わせた。

だが、この光景すらも内藤哲也による演出だったのではと思うほど、フィニッシュシーンは圧巻であった。
2015年前半までの自身が超えられなかった棚橋弘至を、2016年を経た自身であれば超えられるのだ、それを証明するように正調式のハイフライフローを痛む両膝で防ぎ、スイング式のリバースデスティーノ。
さらに正調式のデスティーノで完璧な3カウントを奪ってみせた。
試合前に棚橋弘至は「戦わずして超えられてしまった」と語っていたが、内藤哲也はこの試合で棚橋弘至を超えたのである。

そして試合後、内藤哲也は倒れたままの棚橋弘至の胸を拳で数回叩き、深く一礼している。
nWo JAPAN全盛時代にプロレスファンであった内藤哲也は元々武藤敬司の大ファンであった。
プロレスラーを志してアニマル浜口ジムに入門したものの、スパーリング中に右膝の靭帯断裂という大怪我を負っている。
この怪我で入院している際に棚橋弘至が提唱したU-30初代王者決定リーグ戦を見て、プロレスラーになるという気持ちを保ったのだという。
内藤哲也にとって、棚橋弘至はプロレスラーとなってからも憧れの先輩であり、超えるべき目標であった。
棚橋弘至がいなければ、今の自分はなかったという思いがよぎったのかもしれない。
それどころか、棚橋弘至がいなければ新日本プロレス自体が無くなっていた可能性もある。
棚橋弘至というのはそれだけ偉大なプロレスラーなのである。
深い一礼に関しては、こうした経緯で納得がいった。
しかし、拳で胸を叩いた行為に納得がいったのは試合後のコメントであった。

「早くオレのところまで戻って来いよ」
「彼はもう終わった人間。戻ってくることはないと思うけどさ、戻ってこようとするのは自由だから。楽しみに待っているよ」

内藤哲也は今回の1戦で、これまで続いてきた棚橋弘至という時代を完全に終わらせた。
物騒な言い方をすれば、息の根を止めたのである。
あの胸を叩く行為は、内藤哲也による棚橋弘至への蘇生行為ではなかったか。

大きな時代を終わらせ邁進する内藤哲也と、息を吹き返し1からのスタートを切った棚橋弘至。
新日本プロレスが新たに手に入れた黄金カードを使ってくるのはいつの日か。楽しみに待ちたいと思う。

この記事を書いたライター: シンタロー

コメント

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  • 実況が叫んでた時から思ってたけど、デスティーノ自体変形のリバースDDTなのに、それリバースにしちゃったらただのDDTだよね

    投稿者: 匿名 (2017/01/10 11:19) [通報]
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  • メインの凄まじい試合内容とは違い、プロレスのドラマが凝縮されたような試合だった。二人の歴史を知れば知るほどこの試合の意味が深くなり、色々なことを妄想したり語りたくなる。心に残る試合だった

    投稿者: 匿名 (2017/01/10 14:36) [通報]
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  • PVからラストまで本当にドラマを見ているような試合でした。
    驚嘆より感涙に近いかな。

    投稿者: 匿名 (2017/01/10 22:44) [通報]
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  • スターダストプレス使うと思ったけどディスティーノで締めちゃったね この辺の話しないかな

    投稿者: 匿名 (2017/01/10 23:11) [通報]
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  • 私もスターダストで決まるものかと。
    ただ、解禁するなら、ドームのセミじゃ無くメインで。という思いが強いのかな〜と。

    投稿者: 匿名 (2017/01/11 18:17) [通報]
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  • 内藤の一礼のあと思わず「メインでやってほしかったなあ」ってボヤキが出てしまったけど、その時の声が涙声で自分でもびっくりしたわ。
    今まで感動した試合は数あれど、こんな感動の仕方は初めてだった

    投稿者: 匿名 (2017/01/12 02:43) [通報]
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