2016/5/22 12:39

荒くれ麒麟と未確認飛行物体~"2011年プロレス大賞新人賞"鈴川真一とIGFの行方~【ぼくらのプロレスコラム】

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荒くれ麒麟と未確認飛行物体~"2011年プロレス大賞新人賞"鈴川真一とIGFの行方~【ぼくらのプロレスコラム】
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鈴川真一というプロレスラーは近年のプロレス界では少なくなった大相撲の前頭クラスの元力士だった。
角界では若麒麟の名で活躍した彼は大麻取締法違反で逮捕され相撲界から追放され、自らの生きる場所をプロレスに求めた。

彼が選んだリングはアントニオ猪木が創設したIGF。
IGFという団体は本当に不思議なバトルフィールドだ。
プロレスあり、キックボクシングあり、総合格闘技あり。
総合ルールはIGFルールと呼ばれ、プロレスルールは"GENOME"ルールと呼ばれる異色の団体。
2007年6月に旗揚げされ、来年で10周年を迎えるIGF。
だが、いくら年月や興業を積み重ねて、IGFとは不思議な団体だ。

格闘技バブル崩壊後に誕生したプロレスができない格闘家達がプロレスや総合格闘技をするリングであり、不意にオールドファン必見のレジェンドレスラーを招聘したり、時には1999.1.4の橋本真也VS小川直也のような不穏試合が行われ、創設者のアントニオ猪木はいつもの猪木劇場で盛り上げようとする何が起こるかわからないリング。

プロレスの魅力でもある危険でハチャメチャさにはまっている人間もいるが、その混沌とした空間に飽き飽きしている人間も多く、どこかIGFは既存のプロレス団体とは別ジャンルというイメージがあった。

かつて猪木が旗揚げし活動休止したUFOという団体があったが、IGFはプロレス界の未確認飛行物体である。
ここで私は思うのだ。
もし、鈴川真一がトップを取るためにプロレス界に入ったのなら、入る団体を間違えたのではないのかと…。

190cm・105kgの巨体を誇る元大相撲前頭9枚目・鈴川は2009年に大麻問題で相撲を廃業し、元UWFの宮戸優光が代表を務めるUWFスネークピットジャパンでトレーニングを重ね、2010年にIGFでプロレスデビューすることになった。

「猪木さんが出入りしている飲食店に弁護士もよく行っていて、喋る機会があったみたいで。留置場で事件のことを進める前に、"どうする?"ってその話になっていましたから。僕も留置場でトレーニングを始めちゃって。弁護士さんに紹介していただいて、まずIGFの事務所に挨拶に行きました。それから何回か通って、猪木さんとも直接お会いして、"やってみないか?"って」
(Gスピリッツ vol.22)

鈴川には総合格闘技からもオファーがあったというが、目先のお金より、居場所作りと猪木の下で修業したいという想いからIGFを選んだ。

スネークピットジャパンでレスリングを学んだ鈴川は元々はプロレスファンではなかった。

「深夜にテレビでプロレスをやっているのを何度か観たぐらいで、ああだこうだと言える感じじゃないですよ。(レスリングは)動き方が全然違いましたね。相撲で使っていた筋肉をまったく必要としていないわけじゃないんですけど、似ているようで似ていないところもあって…。スクワットは割とできたほうです」
(Gスピリッツ vol.22)

2010年5月25日に、元UFC王者でPRIDE GP2000王者のマーク・コールマン相手にデビュー戦を行い、TKO勝ちを収めた。
その後、K-1のレジェンドであるピーター・アーツやジェロム・レ・バンナとプロレスルールで対戦し、バチバチにやりあうことで会場を沸かせた。
タイやオランダに渡り打撃特訓に励んだ鈴川はIGFのメインイベンターになっていた。
得意技は相撲仕込みのマーダービンタ。
だが、鈴川はあくまでもストライカー(打撃選手)ではない、プロレスラーなのだ。
ここに鈴川の潜在能力を眠らせている、彼自身とIGFに原因がある。

伝説のプロレスラー藤原喜明はこのような名言を残している。

「プロレスラーは強くて当たり前。だけど強さだけではなくプラスアルファがなければトップにはなれない」

強さを磨くのは大切だ。
問題はこの選手を見て、この団体を見てチケットを買いたいと思わせるサムシングが必要なのだ。
そのサムシングはIGFには不足しているのではないだろうか。

IGFでプロデビューし、その後フリーとなりゼロワンやWRESTLE-1でシングル王者となった鈴木秀樹はIGFについてこう語っている。

「IGFに関しては猪木さんの名前で入ってるだけですしね。選手たちの力でお客さんを呼んでいるわけじゃない。大日本は自分のたちの力で毎回後楽園ホールを満員にしているし、団体としてIGFや全日本の上なんですよ。これはボクの印象じゃなくて悲しいけど実情です。IGFを主戦場としているファイターは取り残されているとは思ってないですけど……逆にIGF以外のプロレス団体は、IGFのことを同じカテゴリーには見ていないと思うんですね。(IGFは「我こそが本物のプロレス!」か?) そんなの、猪木さんの名前の下、しょっぱいのをごましてるだけですよ」
(Dropkick【藤田vs諏訪魔】鈴木秀樹「大日本のほうが全日本やIGFよりお客さんは入ってる。その差が出たんじゃないですか」)

IGFが迷走していく中で鈴川の存在はプロレス界でクローズアップされることは少ない。
試合数が少ないという環境もあるのかもしれないが、それだけが原因ではない。
総合格闘技ルールでも闘っているが、どうやら鈴川はプロレスルールのほうが凄みを発揮できるタイプのようだ。

鈴川はIGFとプロレスについてこう語っている。

「僕らはみんな、猪木さんに見てもらおうと思って頑張っていますから。IGFのリングに上がる人はみんなそうなんじゃないですか。そこはみんな競い合っていると思います。(IGFは)他にはない闘いをしていますからね。それがあるからIGFが好きという人もいますからね。いろんなプロレスがありますから。でもウチの団体は"これだ!"っていう。アーツやバンナとああいう試合をして、自分の中のプロレスの枠が広がった感覚がありました。相撲とは違うルールの中で、どれだけ自分が闘えるのかを今後はもって知っていかなければいけないと思います。だからプロレスの答えはまだ出てないですね」
(Gスピリッツ vol.22)

猪木イズムを追い続ける荒くれ麒麟は今年33歳である。
時間に限りがある。
決断の時は近いのかもしれない。
鈴木秀樹のようにフリーとなり、他のプロレス団体を主戦場にする道を選ぶのか。
それともIGFに殉じるのか?
また大成しないまま、レスラー人生を終えるのか?

そして、IGFは船木誠勝、飯伏幸太、崔領二というプロレス界のスターを参戦させ、新展開を起こそうとしている。
やはりこの団体の動向は読めない。
潰れそうで潰れない。
資金力があるのか?資金に底は尽きているのか?
どこまでIGFはプロレス界の未確認飛行物体なのだ。

鈴川真一とIGFはどこに往こうとしているのだろうか?
その進路はまだ見えない…。

この記事を書いたライター: ジャスト日本

コメント

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  • 個人的には鈴川真一が他団体の強いレスラーとの試合が観てみたい。例えば諏訪魔との一騎打ちとか。

    ID:515717 [通報]
    (2016/5/22 12:57)
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  • IGFは選手がよくわからないうえにチケットが高くて観に行く気になれないんですよね。試合数も少ないし…プロレスは場数も大事ですからプロレスでやっていくなら飛び出すのもありだと思います。IGF自体は…去年、福岡大会が中止になるなど資金的にもきびしいんじゃないでしょうか。イメージですが猪木、高田が絡んだ団体は経営が傾く又は崩壊するって感じが…新日本は猪木の時に傾き去ってから回復しましたが。

    ID:5984 [通報]
    (2016/5/22 19:17)
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  • やっぱり、何かもったいない感じがするんですよね。
    みなさんが言うように、場数を踏めば化ける可能性もあるので。

    ID:890598 [通報]
    (2016/5/24 14:52)
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