2015/9/11 10:01

スギウラマンとスズキ・スイフトのプロレスリング・フォー・ライフ【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】

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スギウラマンとスズキ・スイフトのプロレスリング・フォー・ライフ【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】
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いきなり驚かせてしまうのだけれども、ボクには脳みそがない。だから昔のことを思い出すのがニガテなんだよ。その代わりにボクにはエンジンがある。おかげでボクのご主人、杉浦透さんを東から西、北から南。いろんな場所へ運べたよ。
ボクが生まれてから、ご主人様に出会うまでも、いろんなことがあったけど、すっかり忘れてしまったようだ。ボクの名前は…… スズキ・スイフト、だったかな?

だから杉浦さんに会ってからの4年間が、ボクにとっての一番の思い出だし、一緒に過ごした時間も、一番長く、濃いものだった。

ご主人様がプロレスラーという職業だと気付くのに、それほど時間はかからなかった。北は岩手から、南は九州。全国津々浦々を一緒にずっと過ごしたんだ。旅に行って、車に戻ってくると、ご主人は最初へとへとになっていたよね。4年間という時間は大きくて、独身だったご主人には恋人ができ、助手席に乗せた。そして今の奥さんとなった。最初はちょっと嫉妬した。でもだんだんと体に傷も多くなってきたご主人を見て、ああ、ご主人にはきっとこういう人が必要なんだと、2人を乗せて思ったよ。

何万、何十万キロと2人を乗せて走っただろうか。ボクに思い出すことはできないけれど、思い出は無数にあるはずだよね。奥さんは元リングアナで、現在は売店スタッフ。だからどこに行くのも2人とボクは一緒だった。長旅は疲れるしボロボロにもなるけれど、辞めたいとは思わなかった。だけれど出会いがそうであるように、別れはいつだって唐突だ。9月10日、新木場1stリング。プロレスリングFREEDOMS『奇想天外ダムズ魂!』と名付けられた大会のメインイベントで、僕はデスマッチアイテムとして登場することになった。ご主人様と同じ、プロレスラーにボクもなるんだ。

■KING of FREEDOM WORLD TAG CHAMPIONSHIP
ストリートファイトタッグデスマッチ
<王者>神威&正岡大介組vs杉浦透&スギウラマングレート組<挑戦者>



ご主人様たちを乗せてシャッターから入場したボク。ご主人様をチャンピオンにするため、ボクもがんばるよ。客席から聞こえる「ク・ル・マ! ク・ル・マ!」 ブオンブオン。なんだか勇気が湧いてくる。さっそく相手は僕のフロント、ボンネット部分に蹴りを入れてきたよ。ワワワー! それは有刺鉄線バットじゃないか! 痛い痛い! ご主人様! 「車は提供するけども、嫁さんとの思い出の詰まった大切な車を破壊など絶対させませぬ!!」って戦前に言ってたよね!? 正岡選手に振り上げたバットはかわされて、僕のボディーに大命中! 大誤爆だよ! 大誤爆! うわわ、さっそく僕の身体を守っていたバンパーが蹴り飛ばされてベコンベコン。でも、僕、頑張るよ。ご主人様だって、リング上では同じような思い、してるんだ。ご主人様と同じ体験ができるなんて、愛車冥利に尽きるじゃないか。

ボクのドアを無理やり開けると、神威選手と正岡選手は車内を物色。バッグの中に入った片足だけのシューズ。ビニール傘。さらにはグローリークエスト『恵比寿ナンパ』が出てきてご主人は奥様から強烈な張り手をもらっていたね。

15分を過ぎるころには、神威選手が僕にコンクリートブロックをぶつけてきたよ。フロント、サイドのガラスが飴細工のように大破する。まるで蜘蛛の巣が張ったのようになっちゃった。怒ったご主人は神威選手を割れたフロントめがけてパワーボムを敢行したね。思えばこれも痛かったなあ。

最後はやぐらをおしりに持ってきて、ボクの背中の上での攻防になったよね。やぐらからのスワントーンはご主人を捕え、3カウント。かろうじてテールランプはツクケレド、ボク、ナンダカ、ネムクナッテキタヨ……。

神威「なんてことすんねん! でもこれだけの声援。お前の車にとって、一番の供養になったんちゃう? その涙、負けたからちゃうな。愛車を壊されたからの涙ともちゃうな。お前がまた挑戦したいなら、いくらでも受ける。その時はまた車、持って来いよ!」
杉浦「ありがとうスイフト! 中古8万キロで俺のところに来て4年間。本当に頑張ってくれました。名古屋だけじゃなくて大阪も行ったし、岩手県の一関も行きました。スイフト。本当にありがとう! ではスイフト、引退の10カウントゴングです」

意識の薄れゆく中で、ご主人様の言葉が聞こえたよ。アリガトウ。アリガトウ。ボクもプロレスラーにナレタカナ。ボクもセイイッパイ、テールランプをツケテミルヨ。彼女のイクヨさんも、ヒカるモノをコボシテ、ドウシタノ?

杉浦「本当にありがとうございました。もっと強くなって、必ずアナタのもとにベルトを持っていきます。ありがとうございました!」

右のライトがつかないや。バイバイまたね。ご主人を守ることが、ボクたちクルマのシアワセだから、負けてクヤシイ半面、イマはとってもウレシイヨ。次のクルマにもヨロシクネ。その時はボクも空の上からキットキット ミマモルカラネ……。

この記事を書いたライター: 漁師JJ

コメント

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  • 泣けてきた

    ID:47209 [通報]
    (2015/9/11 21:46)
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  • ドラえもんの映画 海底鬼岩城 のバキーちゃんを思い出した

    ID:48006 [通報]
    (2015/9/12 13:42)
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