2015/8/26 12:05

ハヤブサ先生のLIFE is... ~another story~【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】

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ハヤブサ先生のLIFE is... ~another story~【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】
5.0

2009年のとある日、大正大学の「スポーツライターとメディアの現場論」講座にハヤブサ選手が登壇したことがありました。

多くの聴講生はプロレスそのものを知らない中、ハヤブサ選手は15分に収めた自身のDVDクリップや、平井堅さんが歌う表題の曲をかけ、リングで縦横無尽に飛び跳ね、現在は車いす生活になってしまった生きざまを、いちスポーツ選手に起きた事例として話しました。

手元の週刊プロレスには、プロレスライターであり、大正大学の非常勤講師でもある斎藤文彦さんが、講義の模様を綴っています。学生時代はプロレスラーになるつもりがなかったこと。空中技を失敗し、頭から落下したこと。気が付けば首から下の感覚がなかったこと。意識ははっきりしているのに、“体がない”ということが怖かったこと。そして……。

「窓から外に降りて死のうと思ったけど、体が動かないから窓のところまでいけない。それが悔しかった」
 手術から数週間後、ようやく普通に会話ができるようになると、自分の気持ちを相手に伝えるって、なんて素晴らしいことなんだろうと思い、生きていてよかったと考えるようになった。シーンとした教室にハヤブサの声だけが響いていた。(ベースボールマガジン社「週刊プロレス」No.1453 2009年1月7日号 斎藤文彦「BOYS WILL BE BOYS」より)
とあるノンフィクションライターの方が言っていました。プロレスをノンフィクションで書くのは難しく技量がいる。それはプロレスという特殊な競技性ゆえ、レスラーは虚実を巧みに操り、行動する。嘘は目の前に出てくることで真実になり、次の瞬間には真実をファンタジーや魔法に変えてくる。例えば、その必殺技はどうしてできたの? との問いに、関係者やマスコミ、そしてファンもまた正確な事実よりも、夢ある筆致を選んでしまう。

そしてまた、プロレスモノは、真実をファンタジーで覆った上で、その隙間から見える真実をほのかに楽しむ、厄介な美徳を愛するものたちだということ。目の前の車いすという現実はリアルそのもの。でもハヤブサ選手は、まっさらな聴講生たちにもひとつのファンタジーを与えていました。

 90分間のレクチャーを終えたハヤブサは、教室から出ると、学生たちのいない場所でマスクを脱いだ。ハヤブサの下には40歳になった江崎英治がいた。
「ほんとうはね」と前置きしてから「自分の手でタバコを持って、自分の手でライターで火をつけたくて、必死こいてリハビリをやったようなもんですけどね」とハヤブサは静かにほほ笑んだ。(同上)
ファンタジーというよりも、それはただのカッコつけ、だったのかもしれません。
逆に聴講生たちに言った言葉が真実で、マスクを取った江崎さんは照れ隠しにその言葉を残したのでしょうか。

真実と虚構を行き来する、というと、嘘を並べているような印象になってしまいがちだけれど、きっとこういうことを考えるってこと、なんでしょう。

ハヤブサ選手は、ハヤブサのマスクをかぶっている限り、現役レスラー・ハヤブサ選手なのです。ちょっとカッコつけて、ちょっとカッコ悪くて、ダメもとでも傷だらけの翼を広げて飛んでいくハヤブサ選手なのです。

自分を強く見せたり 自分を巧く見せたり
どうして僕らはこんな風に行き苦しい生き方を選ぶの?
目深にかぶった帽子を今日は外してみようよ
少し乱れたその髪も
可愛くて僕は好きだよ
(Ken Hirai作詞「LIFE is... ~another story」より)
ちなみに2007年にハヤブサ選手はタバコをやめています。なんでかって? その理由をアレコレ考えることも、きっとプロレスのうち、ですよ。

【画像】ベースボールマガジン社「週刊プロレス」No.1809 2015年9月9日号ハヤブサ特集より

この記事を書いたライター: 漁師JJ

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